「超人」バイルズも人間だった――期待の選手を棄権に追い込んだ心の重圧
米体操選手の中で最もメダル獲得数が多いバイルズ選手は、超人のように重力に逆らう。けれどほぼ完璧なヒーローにも不安定な部分はある。バイルズ選手の失敗は、たとえ善意だったとしても、プレッシャーが世界の一流選手に与え得る影響をファンに思い知らせた。
バイルズ選手は体操史上、最も偉大な選手だ。その複雑な動きは誰にもまねできず、事実上、ライバルは存在しない。
今回は半世紀ぶりにオリンピックで連覇を果たす女子選手としての期待を背負い、東京大会に出場した。米国の体操選手の治療を担当してきた元医師のラリー・ナサール被告が、バイルズ選手を含む女子選手を性的に虐待した罪で有罪を言い渡されて以来、初めて出場した大会でもあった。
バイルズ選手はあまりに完璧すぎるため、たった一つのミスでさえもニュース価値が高い。予選では何度も境界から踏み出して減点された(それでも技の難易度からすれば、この日の最高得点だった)。このミスが騒がれると知っていたバイルズ選手は、ネット上で率直にこの状況を説明した。そのコメントも、「世界の重さ」が自分の肩にのしかかっているというコメントと合わせて、再びニュースになった。
バイルズ選手はマットの上にいない時でも注目から逃れられない。米代表チームの1人は、遠くからバイルズ選手を見た時の様子を「ティックトック」で共有した。あまりに知名度が高いので、バイルズ選手と争う体操選手は影が薄くなる。バイルズ選手は今年のオリンピックで最も目立つ「顔」だった。
しかし27日、数時間前に予想外の敗北を喫したテニスの大坂なおみ選手と同じように、バイルズ選手も、最も高いレベルで争うことの精神的負担が自分にものしかかっていると語り、引退を口にしていた。