金メダリストは数学者、キーゼンホファー選手が五輪史上最大級の番狂わせ
(CNN) 東京オリンピック(五輪)の自転車女子個人ロードレースが始まる前、アナ・キーゼンホファー選手(オーストリア)について話している人は誰もいなかった。だが、今は違う。
当初、キーゼンホファー選手はライバルに比べ経験不足とみられていた。特に今回のレースには、前回王者のアナ・ファンデルブレーヘン、元五輪銅メダリストのエリーザ・ロンゴボルギーニ、英国のリジー・ダイグナン、ドイツのリサ・ブレナウアー、元世界王者のアネミック・ファンフリューテンといった選手が名を連ねていた。
だが、2017年にプロ転向を果たしたばかりのキーゼンホファー選手が世界クラスの面々に気後れすることはなかった。厳しい高温多湿と戦いながら147キロのコースを疾走し、オーストリア人として1896年以来初めて自転車競技の金メダルを手にした。
キーゼンホファー選手はCNNの取材に、「極限的な戦いだった」「これほど空っぽになるまで力を出し尽くしたことは私の人生でなかった」と振り返る。
「信じられなかった」
たとえ他の人から、25日の走者の中で数合わせ的な存在と思われようとも、キーゼンホファー選手自身にそんなつもりはなかった。
「勝てるかもしれないという小さな希望、小さな思いはいつも持っていた。私がスタートラインに立てば、それは準備ができていること、勝つ意欲があることを意味する。ただ、現実的に考えて自分が優勝候補でないことも分かっていた」
キーゼンホファー選手は序盤から先頭集団の一員としてレースを進めていたものの、番狂わせの気配になったのは最終ストレッチに入ってから。最後の40キロで金メダルへのスパートをかけ、独走状態となった。