水面を走るだけじゃない、滑空する電動パワーボート「レースバード」

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水面上を滑空可能な電動パワーボート「レースバード」の試作機/Lloyd Images

水面上を滑空可能な電動パワーボート「レースバード」の試作機/Lloyd Images

(CNN) スーパーヨットや定期クルーズ船に混じってモナコのマリーナに停泊する1隻の新しい船舶。その外観は、ボートというよりまるで宇宙船だ。

これは「レースバード」と呼ばれるシングルシーターの電動パワーボートで、船体に取り付けられた鮮やかな緑色の水中翼2枚によって水面上を滑空できる。間もなく開幕するE1シリーズ用パワーボートの最初のプロトタイプ(試作機)だ。

E1を考案したスペイン出身のスポーツ起業家アレハンドロ・アガグ氏は、電動モータースポーツのフォーミュラEとそのオフロード版のエクストリームEを立て続けに開拓。現在は電動パワーボート選手権を開催する河川や海を探して、世界有数の大都市を回っている。

「よりクリーンな移動手段への移行を車道やオフロード、さらに海や川でも実現することは、どれも数多くの解決策の一部だと考える。そうした解決策をまとめて適用しなくては、気候変動と地球温暖化という大きな困難の緩和は図れないだろう」と、アガグ氏は訴える。

フォーミュラEがニューヨーク、ロンドン、香港などの大都市の路上で電気自動車レースを開催したように、E1シリーズもシドニーハーバー、ベネチアの運河、リオデジャネイロのパン・デ・アスーカル山沖といった大都市の河川や海、運河でのレース開催を目指す。

しかし、今は2023年春に予定される開幕に向け技術とボートに注力。選手権の開幕までに確保するというそのボートはただ水面に浮かぶだけではなく、空中を「飛行」もする。

「グライドモード」

元F1(フォーミュラワン)のエンジニアで後にE1の最高経営責任者(CEO)となるロディ・バッソ氏もアガグ氏に協力し、マクラーレンやフェラーリ、米航空宇宙局(NASA)での勤務で培った豊富な技術的経験をレースバードの開発に注いだ。またボートメーカーのシーバード・テクノロジーズの創業者ソフィ・ホーン氏も開発チームに加わり、レースバードの設計図を作成した。

ホーン氏は、鳥が水面のすぐ上を飛んでいる時の飛び方を「グライドモード」と呼んでおり、その姿からレースバードのデザインのヒントを得たという。

そうして生まれたのがこの水中翼だ。レースバードの水中翼は、かつて電動サーフボードに使われた水中翼とコンセプトが似ており、加速すると船体が水面上約1メートルの高さまで浮く。

このフォイリング(水中翼)システムは、レースバードの未来的な外観に一役買っているが、水の抵抗を減らすという技術的な目的も果たしている。水中翼の効果で、速度は50ノット(時速約92.6キロ)まで上昇し、バッテリーも40分間持続する。

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