お笑い公演で騒ぐ幼児、親子を退出させたコメディアンに賛否 豪
(CNN) お笑い公演の最中に赤ちゃんが母親の腕の中で声を立て始めたら、コメディアンはどうすべきなのか――。米国人コメディアンのアルジ・バーカーさんは、オーストラリアのメルボルンで行った公演でそんな状況に陥った。
20日夜、メルボルン国際コメディフェスティバルで開かれた公演の最中の出来事だった。バーカーさんは途中で話を中断し、生後7カ月の子どもを連れた母親に、会場から退出するよう求めた。観客の中にはこの母親に同情して一緒に退出した人もいれば、退出する母親に罵声を浴びせる人もいた。
この一件をきっかけにオーストラリアでは、母親が好きな場所に子どもを連れて行く権利と、芸人が乳幼児に妨げられずに公演を行う権利をめぐり、激しい論争が巻き起こった。中には子どもは家に置いて出かけるべきだという意見もある。
バーカーさんに頼まれて退出したのは母親のトリシュ・ファランダさんと娘のクララちゃん。この公演の観客は15歳以上と規定されていた。
バーカーさんは22日に放送されたメルボルンのラジオ局3AWの番組の中で、この親子を追い出した判断について「簡単ではなかった」としながらも、「公演のためにそうした」と述べ、料金を払っている観客は邪魔されずに見る権利があると訴えた。
その上で、「彼女に恥ずかしい思いをさせたことは分かっているし、それについては申し訳なく感じる」と話している。
公演の中断
バーカーさんはメルボルンの劇場で数百人の観客を前に公演していたところ、赤ちゃんに騒がれて思考が中断してしまったとABC放送に語っている。
「料金を払ってお笑いを見に来てくれたほかの700人のため、赤ちゃんにここにいてもらうことはできないと彼女に丁寧に頼んだ」とバーカーさんは言い、母親が授乳していたことは、劇場の照明のために分からなかったと訴える。
恥をかかされた
一方、ファランダさんは複数の地元メディアに対し、娘を連れて退出するようバーカーさんから求められた時は、冗談だと思ったと振り返った。
ファランダさんがCNN提携局のセブンニュースに語ったところによると、バーカーさんから公演の途中で「ここに赤ちゃんがいる?」と尋ねられ、「僕は赤ちゃん語が得意なんだ。私を外へ連れて行ってと言ってるよ」と促されたという。
赤ちゃんは泣き叫んでいたわけではないとファランダさんは主張し、娘をなだめようと授乳しながら荷物をまとめて4列目の席から退出しようとしていたと説明。バーカーさんについては「威圧的で、私の目の前に立っていた」と3AWに語った。ナインニュースによれば、会場にいた数人はファランダさんに罵声を浴びせた。
ファランダさんと一緒にいた友人と、子どもや孫がいるという10人ほどの女性、さらに男性1人が、同情して一緒に退出したという。
今回の騒ぎをめぐって政治家のエレン・サンデルさんは「新米ママたちにとって、あらゆる障壁の中で社会参加するだけでも大変なのに、ただコメディフェスティバルに参加しようとしただけでこんな屈辱を受けるなんて、ひどすぎる」とX(旧ツイッター)に投稿した。
これに対し、子どもと孫がいるという女性は「騒ぐ子どもを公演に連れて行く自分の権利の方が、お金を払って公演を見に来たほかの数百人の権利に勝ると思うのは、完全な傲慢(ごうまん)」と書き込んだ。