サル型ロボット、月に降り立つ? 独で開発進む
従来の多足ロボットの場合、設計や制御が簡単だとの理由から、接地点は足の特定の1箇所に限られていた。だが今回のサル型ロボットでは下肢システムの高度化を重視。接地点を複数箇所に設定し、実際のサルの下半身にみられるひねりやねじりといった動きにも対応できるようにしている。
また手足に多数のセンサーを備え、接触を感知する部分を増やした点でも現実のサルにより近づいたといえる。43個の感圧センサー(FSR)を備えているほか、衝突検知用に6個のセンサーを使用。さらに、かかとの着地点を予想するための距離センサーや温度センサーも搭載している。
ただチャーリーが機能的に最も優れているのは、実際のサルと同じく脊椎(せきつい)を持っている点だ。脊椎が可動する仕組みを構築したことで、膝の動きを減らして体勢を低く保つことができ、移動のために必要な力を軽減した。本体の強度や機動性が向上したうえ、20~25キロの重りも運べるようになった。また脊椎に電子装置を埋め込むことで、体全体を6軸力覚センサーとして使用できるにようになり、人間や動物の動きを再現することが可能になったという。
月探査ロボットに搭載される機能は気が遠くなるほど多岐にわたる。見る、穴を開ける、すりつぶす、収集するなどの動作はもちろん、極端な温度状況や真空状態といった厳しい条件下でも稼働できなくてはならない。可能な限りの軽量化と最大限の強度、機能性とを実現させたうえで、突発的な問題に対処する能力も必要になる。
地球から38万キロ離れた月面での作業となる以上、誤作動は許されない。クーン氏は「地球上と同じ電子装置は使えない。宇宙空間での使用に耐え、環境に適応できるタイプでなくては」と話し、サル型月探査ロボットが宇宙空間に適応するまでにはあと3~4世代かかるとの見方を示す。
DFKIではサル型だけでなく、カマキリ型やサソリ型といった月探査ロボットの開発も進めている。いずれも試作段階にとどまっているが、クーン氏は2足歩行と4足歩行を使い分けるサル型ロボットに大きな可能性を感じている。「こうしたモデルは4本足で立って安定を保つことができる一方、2つの前足を使って物を扱うこともできる」と話し、さらなる研究の進展に期待を寄せた。