AI活用の水道メーター、漏れ検知で被害防止 世界で採用広がる
(CNN Business) イスラエルの新興企業が人工知能(AI)を活用した水道メーターを開発し、世界で採用が広がっている。
イスラエル人技術者のモシェ・ラビッド氏はある日自宅に帰ると、水道管が破裂し床が水浸しになっていた。モップで拭き終えると、二度とこのようなことが起きないような解決策を模索し始めた。そうして誕生したのがAIを使った水道メーター「WINT」だった。
WINTは既存の配管システムに組み込んで使う。通常の水の流れを学習し、異常があれば検知し、被害が出る前に不具合の箇所を遮断する。テルアビブに拠点を置くWINTウォーター・インテリジェンスの最高製品及び戦略責任者のヤロン・ディシャン氏はそのように説明する。
WINTはセルラーネットワークを介してクラウドに接続し、アプリを使ってリアルタイムの分析や警告の情報を通知する。
提供を開始した2012年には住宅向けを想定していたが、その後水の被害や水漏れによる無駄を防ぎたい企業も対象となった。
市場参入から9年たち、アルゴリズムの改良を重ねたWINTは「節水テック」として認知を獲得。19年には米国や欧州に進出し、既にマイクロソフトやHP、マスターカードといった大手企業が採用している。
水の被害による膨大なコスト
英保険協会によると、英国の家財保険で最も請求の多いものの一つが水による被害だ。水道管の破裂では1件当たり平均9000ポンド(約136万円)の請求額に上るという。
他にも節水テックの企業はあるが、WINTの特徴は大規模なオフィスビルや工場、建設現場にも対応できる点にあるとディシャン氏は語る。
漏水による被害額は数十億に上ることもある/Shutterstock
「水がビル内で引き起こす損害は極めて大きい。20階でパイプが破損すれば水は下へと流れ落ち、行く手にあるすべての物を破壊する。1度の事故で数千万ドル(数十億円)の損害を経験した顧客もいる」(ディシャン氏)
ロンドンにある欧州最高層のビル「ザ・シャード」などの建設を手がけた英建設会社メイスはこの問題をよく知っている。技術責任者のポール・コノリー氏は「建設の最終段階でパイプの破損による多くの問題を経験した。その被害は何百万ポンドにも上る」と語る。
コノリー氏は、金銭的な損害のほかに企業ブランドへの傷や保険料の上昇にもつながることから解決策を模索せざる得なかったと言及。WINTは今や同社のすべての建設現場に導入され、収支の改善や持続可能性の目標達成に貢献しているという。
ディシャン氏によると、WINTは通常、利用者の水の消費を20~25%節約するという。
水の節約
世界で水の供給が問題となる中、水の使用量や無駄の削減はより重要性が増してきている。米国の水道関係団体によると、パイプの3ミリのひびから1日に漏れ出る水の量は約946リットルに及ぶ。
ディシャン氏によると、ビルに入った水の25%は流れ続けるトイレや蛇口からの水漏れで失われている。米国の家庭だけで、そうした水漏れから1年間に1兆ガロン近い水をムダにしているという。
「一方で水不足の問題があり、他方で巨額の損害が生じるビジネス上の大きな課題がある。そして両方を解決可能なソリューションがある。そのことが自分をわくわくさせる」とディシャン氏は語る。