「ハリポタ」にアイスクリーム、北朝鮮ユーチューバーの実態は

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昨年6月に開設したユミさんのユーチューブ・チャンネルは、この1~2年でインターネットに現れたSNSアカウントのひとつだ/Olivia Natasha-YuMi Space DPRK daily/YouTube

昨年6月に開設したユミさんのユーチューブ・チャンネルは、この1~2年でインターネットに現れたSNSアカウントのひとつだ/Olivia Natasha-YuMi Space DPRK daily/YouTube

パク研究員は、こうした表現は全部が全部嘘(うそ)ではないものの、誤解を招く恐れが高く、一般的な暮らしを描いているわけではないと言う。

政府高官やその家族など、北朝鮮の裕福なエリート層がエアコンやスクーターやコーヒーといった嗜好(しこう)品を利用していることは度々報じられている。ユーチューブの動画に出てくる施設も実在する。だが一般の人々は出入りできず、利用は「特権階級の特別な人々」にしか認められていないとパク氏は言う。

パク氏によれば、こうした施設は動画が示唆しているほど定期的に開園・営業しているわけではないようだ。「たとえば、北朝鮮の電力供給はテーマパークを営業できるほど整備されていない。週末か、あるいは動画のような特別な日しか営業していないという話も聞く」とパク氏は付け加えた。

北朝鮮は頻繁に停電や電力不足に見舞われることで有名だ。米中央情報局(CIA)が19年に作成した「ワールドファクトブック」の推計では、人口の約26%しか電気を利用できない。11年と14年に撮影された夜間の衛星画像にも、停電した北朝鮮は闇に紛れ、周囲の暗い海とほとんど見分けがつかなくなり、隣国の中国や韓国のきらびやかな光と対照をなしていた。

英語が堪能で、貴重な嗜好(しこう)品を入手できていることからも、こうしたユーチューバーが高い教育を受けていることがうかがえる。おそらく政府高官の関係者だろうとパク氏は語った。

脱北者が以前CNNに語った話では、一部の北朝鮮人は授業でイギリス英語を学んでいるという。英国を拠点とする組織「ブリティッシュ・カウンシル」も北朝鮮で英語教師の研修プログラムを実施し、17年に中止するまで十数年以上も教師を派遣していた。

新手のプロパガンダ

北朝鮮のプロパガンダは今に始まったことではない。これまでにも旧ソ連風のポスターや、軍隊の行進やミサイル実験の映像、白馬に乗る金総書記の姿などが公開されていた。

だが専門家によれば、先のユーチューブ動画や、微博(ウェイボー)や哔哩哔哩(ビリビリ)といった中国系SNSでも見られる北朝鮮のアカウントは、新たな戦略を物語っているという。つまり「親近感」だ。

「北朝鮮は、平壌が『普通の街』だと強調しようとしている」とパク氏は言い、上層部は「世界からの見え方を気にしている」と続けた。

ハ研究教授によれば、北朝鮮は「安全な国」だというイメージを打ち出して、破綻(はたん)した自国経済のために観光促進を図っているとみられる。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で打撃を受けた後はなおさらだ。

今のところまだ観光客の受け入れは再開されていないものの、「どこかの時点でパンデミックは終息する。北朝鮮は経済目的で観光に力を入れている」とハ氏は言う。

パンデミック以前の観光は選択肢が限られ、観光省が派遣したガイドの引率で国内を回っていた。そうしたツアーは周到に準備され、北朝鮮を最高の形で見せるように計算されていた。それでも米国などの多くの国々は、北朝鮮を訪問しないよう呼びかけている。

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