世界を魅了する東北の酒、おいしさの秘密とは
酒類総合研究所と日本酒造組合中央会が共催する全国新酒鑑評会では、日本全国の醸造所から寄せられた数百の銘柄が鑑定・評価される。2016年には、計297の金賞のうち147を東北6県の醸造所が受賞した。
東京を拠点に活動するジャーナリストで、世界最大規模のワイン品評会、インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)で日本酒部門の審査員も務めるメリンダ・ジョー氏は、東北の酒は軽い飲み口で、見た目もきれいで上品なのが特徴と語る。
東北の酒が他の地域の酒と大きく異なる理由の1つとして、東北地方の地理的要因が挙げられる。東北地方は、冬は大雪に見舞われ、また都会からも離れているため、農業が頼みの綱だった、と日本酒造組合中央会の井内博美氏は語る。
井内氏によると、東北地方では昔から大量の酒が造られてきたが、ここ数十年間は醸造法を改良する方向に変化しつつあるという。
この動きを主導しているのが、岩手県周辺を拠点とする杜氏(とうじ)集団、南部杜氏だ。井内氏によると、南部杜氏の影響で、西日本の杜氏たちは東北の杜氏の酒造りに注目しているという。
またジョン・ゴントナー氏は、東北の低い気温も酒造りや味に影響を与えていると指摘する。
「東北の気候は寒いため、東北の醸造所は低温での発酵、製造、保存が可能だ。東北の酒が日本の他の地域の酒に比べて飲み口が非常に軽く、繊細で、洗練された上品な味わいである理由の1つとして、東北の寒い気候が挙げられる」(ゴントナー氏)