本当は高級料理? カンボジアでタランチュラのフライを堪能
だが、そんな幸運は訪れなかった。
ざるを持ち上げても、体毛が何本か焼け焦げた以外、外見はほとんど変わっていなかった。
アウチさんはこのうち1匹を記者に渡し、食べるよう身ぶりで促した。私はひるまないように努力していた。アウチさんと通訳は揚げたてのタランチュラを本当に喜んでいたため、その雰囲気を壊したくなかった。
自分の顔の前にタランチュラを持ってくると、細くカリッとした足が一番マシなように思われた。だが通訳は、私が安易な選択肢に逃げようとしていることに気付き、「最もおいしい体の部分を先に食べましょう。体の方が味がする。足はあまりおいしくない」と促した。
その数秒後、記者の歯がタランチュラの胴体をかみ砕くと、内臓が口の中に広がった。私は「カニ、カニ、カニ。カニのような味だ」と心の中で繰り返していた。
最初にタランチュラの姿を見ていなければ良かったのだが。
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本記事はフリーランスのフォトジャーナリスト、ローナン・オコネル氏による寄稿です。