感染症撲滅へ、武器は「蚊の工場」<1> 善と悪の戦い
中国・広州(CNN) 米ミシガン州立大学の研究者で昆虫学者のジーヨン・シー氏には使命がある。ジカウイルス感染症(ジカ熱)やデング熱といった壊滅的被害をもたらす病気の病原体は蚊によって運ばれるが、シー氏は、こうした蚊を中国から、そして将来的には全世界から一掃したいと考えている。
シー氏はそれを「善対悪」という古典的な方法で実現しようとしている。
広さ約325平方メートルの研究所は中国・広州にある。シー氏は「われわれは、悪い蚊を退治するのに役立つ善い蚊を作り出している」と語る。
白衣に身を包んだシー氏は、数百枚ものトレーの前で身振りを交えながら穏やかな口調で説明してくれた。各トレーには約6000匹の蚊の幼虫が入っている。部屋にはイーストを混ぜた牛の肝臓の粉末の匂いが漂う。この粉末は蚊の幼虫にとって最適な餌だという。
この「蚊の工場」は、広州市の中心部から車で約1時間の場所にある中山大学のキャンパス内にある。
研究所の正式名称は「中山大学・ミシガン州立大学・熱帯病昆虫媒介抑制共同研究センター」。この研究所では、実験助手らが週に最高で500万匹ものヒトスジシマカを育てている。ヒトスジシマカはアジアで多く見られ、デング熱やジカ熱の流行の原因となっている。