感染症撲滅へ、武器は「蚊の工場」<1> 善と悪の戦い
研究所で飼育されている蚊はデング熱などのウイルスが蚊から人間に感染するのを防ぐ働きを持つ細菌に感染している。ボルバキアと呼ばれるこの細菌に感染した雄の蚊は生殖能力を失うため、この雄の蚊と交尾した野生の雌の蚊が産卵しても、その卵が孵化(ふか)することはない。そこでシー氏の研究所は飼育した蚊のうち、雄のみを放出している。
これらの雄の蚊は、蚊の工場から約60キロ離れた島で放出される。人口1900人のこの村と本土の間には全長300メートルの橋が架かっている。シー氏によると、蚊が飛べる距離はせいぜい50~75メートル程度であるため、島から本土に到達できる蚊の数は限られるという。
シー氏は、この技術が蚊の数の大幅な減少につながることを期待している。
シー氏の手法は型破りではあるが、一部の科学者らは、毎年数百万人の被害をもたらす最も一般的な蚊媒介性疾患のうち、ジカ熱とデング熱の2つを根絶する最も有望な方法の1つと称賛する。
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次回「感染症撲滅へ、武器は『蚊の工場』<2> ワクチン開発は前途多難」は2月19日公開