格納庫に眠る2機目のAn225、世界最大の未完成機に迫る
力学の大聖堂
取材班はキエフ西郊に広がる産業地帯を車で案内され、An225の未完成機が眠る格納庫に到達した。建物に入るのは力学の大聖堂に足を踏み入れるようなもので、驚くほど静謐(せいひつ)だ。
内部の広大な空間には、機械設備や各種の航空機部品が格納されている。
その全てを圧してそびえているのが未完のAn225の巨大な胴体だ。完成にこぎ着けた場合、全長は84メートルとなり、世界最大の旅客機であるエアバスA380型機を9メートル上回る。
印象的な光景だが、この壮大な航空機がばらばらな状態にあるのを見るのは少し残念でもある。翼幅88.4メートルとなるはずの主翼は取り付けられておらず、住宅ほどの大きさの前脚も近くに置かれたままだ。
An224をめぐる物語が始まるのは1960~70年代。ソ連が米国と宇宙開発競争を繰り広げていた時代だ。
70年代末には、ソ連の宇宙船「ブラン」を組み立て場所からカザフスタンのバイコヌール空軍基地まで輸送する必要性が出てきた。当時はブランを運べる航空機が存在しなかったため、アントノフが開発を命じられた。
こうして生まれたのが巨大機のAn225だ。ムリーヤは構想開始から3年後の1988年12月21日、ブランを無事バイコヌールに運ぶことに成功した。