中国で急成長する「レッドツーリズム」、その背景とは
スウェーデンを拠点とする独立中国PENセンターの事務総長、チャン・ユー氏は今月、米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカとのインタビューで、「レッドツーリズム」は「巧みな洗脳」を通じて中国共産党の主張する真実を信じ込ませるのに効果的だと指摘した。
「(レッドツーリズムの)最も効果的な部分は、すべてがフェイクではないことだ」とチャン氏は説明。「こうした観光地は半分真実、半分うそだ。その最も重要な目的は、『共産党なしではこの国は終わりだ』と人民に信じ込ませることにある」としている。
北京にある「中国人民抗日戦争記念館」/Hannah Zhang/CNN
「レッドツーリズム」を貧困削減に活用
一方、英国に拠点を置くアイロンブリッジ国際文化遺産研究所の所長、マイク・ロビンソン氏は、中国政府が掲げる持続可能な開発という目標と、「レッドツーリズム」の伸びとの関連を指摘。地域社会には具体的な恩恵があると語る。
広安はその一例だ。鄧小平の旧宅は四川省では初めて、中国の観光業界で最高ランクに当たる「5A」の格付けを取得した。
2000年代初頭から改修や改良が続けられ、現在では博物館や湖、銅像のある広場を含む3.19平方キロの複合観光地になっている。
風光明媚(めいび)な景観や豊富な農産物とともに、広安の「レッドツーリズム」の魅力は地元企業の繁栄に一役買ってきた。
広安は17年、四川省で最初に絶対的貧困から抜け出した地域のひとつになり、19年には、人口50万人足らずの同地域に300万人以上の観光客が訪れた。
ロビンソン氏は「一応指摘しておくと、観光政策を動かすのは経済だ」と説明。「『レッドツーリズム』が農村再生や農業の多角化、地域生活の向上と密接に結びついているのは偶然ではない」と語る。
レッドツーリズムはまた、共産党が中国のすべてを担っていることを観光客と地元住民に絶えず想起させるものでもある。これはまさに、習氏が好んで口にすることだ。