台湾最後の「漁火」漁船、伝統絶やさぬよう奮闘
伝統を守るために
徐さんがこの漁火漁法を守ろうと奮起したのは、この伝統漁法が台湾の遺産における重要な一部だからだという。「このままではすぐに消滅するという強い危機感があった」と彼は語る。
エコツアーも主催している徐さんは、地域の生態系と密接に関係しているとして、文化遺産の重要性を高く評価している。
もはやサッパを取っても利益にはならないが、漁師たちは徐さんのツアーによって収入を得られるようになった。このツアーのおかげで彼らは漁を続け、世界中の人にこの伝統を伝えることが可能になった。
15年にはこの漁法が新北市の文化資産に登録され、この伝統漁法を維持する重要性への意識が高まった。
希望の光
多くの漁師が過酷な仕事と低収入のために引退する中、簡士凱さん(28)は家業を継ぐために漁師になることを決意した。簡さんは兵役を終えるとすぐ、漁火を使った漁について学び始めた。
「父が漁火の漁船を一隻所有していたので、私がこの仕事に就くのは自然なことだった」と語る簡さん。
「2年前、火長が健康上の理由で引退を余儀なくされた。船に乗っていた父やおじたちが伝統を次世代に伝えたいと考え、私に引き継ぐことを勧めてくれた。だから私はこんな短期間で火長になった」(簡さん)
彼は現在、台湾最後の漁火漁船で火付け役を担っている。夏の繁忙期には午後4時から朝7時まで働くこともあるが、簡さんはやりがいがあると話す。狙いを定めて大漁になった時の達成感は格別だという。