鉄道ファンがオリエント急行の「謎」を解明するまで
(CNN) フランス人の鉄道愛好家アルトゥール・メテタル氏がユーチューブで動画を見ていると、画面の隅に映る停車中の車両が目に留まった。
車両の塗装は特徴的なナイトブルー系。20世紀の豪華旅行の代名詞だった誉れ高い欧州横断旅客列車「オリエント急行」ゆかりの色だ。
ミステリー作家アガサ・クリスティーによって不朽の名声を得た列車はもはや現存していないが、ラグジュアリーな旅を専門とする旅行会社ベルモンドはロンドン―アムステルダム間で復元版オリエント急行を運行している。ホテルグループのアコーも、オリエント急行の名前でイタリアを中心に運行を開始する予定だ。
メテタル氏は鉄道ファンであると同時に、オリエント急行の歴史をテーマにした博士号の取得にも励んでいた。メテタル氏の調査は、当時のオリエンタル急行の車両が何台残っているのか、どこにあって、誰が所有し、どんな状態なのかを確かめることだった。
ベルモンドのオリエント急行路線を走る車両のように年代物の車両の一部がいまも現役で活躍したり、博物館に展示されたりしていることはメテタル氏も知っていた。だがいまだ数多くの車両が世界各地に点在し、忘れ去られているだろうと同氏は考えた。
メテタル氏は2015年、1年の大半を打ち捨てられた車両探しに費やした。史料を掘り返し、鉄道ファンと掲示板でやりとりし、インターネット上の動画をくまなく探した。時には期待できそうな手がかりを見つけた。ユーチューブの動画に出てきた青い車両もそのひとつだった。
メテタル氏は動画の一時停止ボタンを押し、画面をじっくり検証した。動画の投稿者は匿名で、付随情報はほとんどなかった。だがかろうじて、スクリーンショットの画像から「マワシェビチェ」という駅名が判別できた。
グーグルで検索すると、ポーランドにはマワシェビチェという地名が複数存在することが分かった。メテタル氏はグーグルマップでそれぞれの場所を調べ、3D表示とズームを繰り返しながら、白い屋根と特徴的なブルーの車体を探した。
そしてついに、メテタル氏は探していたものを見つけた。オリエント急行とおぼしき13両の列車が、ポーランドとベラルーシの国境沿いのマワシェビチェ駅に停車していたのだ。
メテタル氏はCNN Travelの取材に、「夢のような」瞬間だったと語った。
「13車両がひとそろいだ!」とメテタル氏は叫んだ。「お宝を発掘したようなものだ」
グーグルで列車に目を留めた時は「信じられない気分」だったが、メテタル氏は期待に胸を膨らませるのをこらえた。車両がなぜここにあるのか、今現在どんな状態なのか、衛星画像が撮影された後に移動されたかどうかもわからなかった。
そこで自分の目で確かめようと、メテタル氏はマワシェビチェに出向いた。
写真家の友人を引き連れて、ポーランドの国境に到着した時のことは決して忘れないだろうとメテタル氏は言う。