英男性、家族のために庭で飛行機を作成
ロックダウン中のプロジェクト
アリセリルさんは自分ひとりで作業を完了したが、人手が必要なところは何度かアブヒラシャさんもサポートに駆り出された。長女のタラさん(7)も、パーツからビニールを外す作業に手を貸した。
20年の夏が終わるころには尾翼と両翼が完成。10月には次のキットが届き、胴体部分の組み立てに取りかかった。
当初は組み立て専用の作業場を借りるつもりだったが、アリセリルさんは自宅に作業場を作ったのは最善の選択だったと感じている。
「小屋に足を運ぶだけで作業ができた。スペースは狭くなるが、何もかも裏庭にそろえておけるのはとても便利だった」(アリセリルさん)
それぞれの行程は、次の段階に進む前に査察官からチェックを受けなければならなかった。最終的にLAAの査察は12回ほど行われた。
パーツの大部分が組みあがると、次はいよいよ全体の組み立てだ。アリセリルさんは最終的な組み立てとエンジン取り付けのために、パーツをすべて自宅からケンブリッジ近辺の格納庫へ移した。数カ月後には最後の査察をクリアした。
英国で組み立てられたスリングTSiの先駆けだった。次女にちなんで「G―ディヤ」と名付けられた飛行機は、22年1月に初飛行を許可された。
1年半かけて組み立てた飛行機をテストパイロットが操縦するのを地上で待つ間、アリセリルさんは気が気ではなかったと振り返る。
初飛行
「離陸してから20分ほどして戻ってきた。本当にほっとした。(テスト飛行の間は)顔を上げて状況を見ることもできなかった」(アリセリルさん)
初飛行はさまざまな意味で意義深い出来事だった。
「こうした自作プロジェクトは、初飛行が行われるまではプロジェクトにすぎない」とアリセリルさんは説明する。「いったん飛んでからは、一人前の飛行機だ。もうプロジェクトではなくなる。精神的にも大きな前進だ」
いよいよ初めて自ら操縦する時がきた。アリセリルさんと一緒に、経験豊富なテストパイロットが同乗した。
アリセリルさん本人は慎重だったと言うものの、テストパイロットが「まるでレーシングカーのように飛行機を操った」と振り返った。
「ものすごく緊張していた。機体に余計な負荷をかけたくなかった」とアリセリルさん。「でも彼(テストパイロット)は限界ぎりぎりを責めてきた。あれを経験できたのはよかった。(機体が)あそこまで持ちこたえられることが分かった」