自転車でアラスカからアルゼンチンへ 10代の旅に「悔いなし」
もともと自転車に乗り始めたのは車がないという理由からだったが、今では最高の移動手段だと思っている。車や飛行機と違ってゆっくりと、自分の足を動かして進むから、小さな町や曲がり角にも愛着がわく。
メキシコを通過した4カ月半は、これまでの人生で最も有意義だったと振り返る。一家がメキシコ出身なので毎年訪ねてはいたが、言葉は分からない。その国を自転車で走り抜けながら言葉も習うのは、貴重な経験だった。
出発した時はほとんど金を持たず、1カ月430ドル(約5万7000円)の予算で切り抜けた。「純白人の金持ち」だからこんな旅ができたのだろうというコメントもあったが、「実際はメキシコ系の1世で裕福でもなく、費用は自分で出した。自転車旅行にそれほどお金はかからない」と強調する。
旅先で出会った中には毎晩ホテルに泊まる人もいれば、ごみ袋を乗せて走る人もいた。
旅行中の約8カ月はローガンという名前の仲間と一緒だったが、コロンビアに入ったところで分かれ、その後は単独で走った。
特に印象的だったのはエルサルバドル。「とても平和で居心地が良く、静かな国だった」という。
つらい経験もあった。持ち物を盗まれたのは少なくとも5回。コロンビアでは転倒して頭を打ち、40針も縫うけがをして1カ月間入院した。これをきっかけに、遺書を書くことにした。
メキシコ南部でローガンとともに携帯電話を盗まれたうえに、40度を超える暑さが2週間以上続いた時は、バスに飛び乗って家に帰ることも考えた。
最後の1カ月は、ひたすらゴールインの瞬間を想像していた。目的地のウシュアイアにたどり着いたのは今年の1月10日。計3万2000キロ、527日間の長い旅だった。