イタリア、世界最長の吊り橋建設に意欲 マフィアと地理的条件が障害に?
断層線とマフィア
橋の建設計画はかなり進んでいるように見えるかもしれないが、課題は複雑だ。
南イタリアにはカラブリア州を拠点とするンドランゲタと、シチリアを拠点とするコーザ・ノストラという2つの大きな組織犯罪シンジケートが存在し、どちらも建設プロジェクトに潜り込むことにたけている。このため現地では汚職が発生しやすい。
シチリアで30年間逃亡生活を送っていたコーザ・ノストラのボス、マッテオ・メッシーナ・デナーロ容疑者が最近逮捕されたのは、同プロジェクトには追い風だ。
デナーロ容疑者の逮捕に貢献した情報提供者の証言によると、デナーロ容疑者は他のマフィアのボスと同様に橋の建設に反対していたという。組織犯罪シンジケートは貧困や低開発を食い物にしており、それが橋の建設に反対する一つの理由だ。
デナーロ容疑者は逮捕されたが懸念は残っている。例えば輸送や供給が犯罪組織の支配下に置かれる可能性や、地元のマフィアに用心棒代を請求される恐れなどが指摘されている。
しかし、サルビーニ氏は不安視していない。先ごろの議会での発言で「犯罪組織の関与を恐れてはいない」とし、さらに次のように続けた。
「そこで事業を行うのはイタリア、欧州、そして世界の最も優れた企業であることを保証できる。監督機関を設置し、橋に投資されたすべてのユーロの使われ方を監視してもらう」
また地球物理学的な問題もある。こちらはマフィアよりも対処が難しいかもしれない。
メッシーナ海峡は、1908年にマグニチュード(M)7.1の地震を発生させた断層線上に位置する。この地震で10万人以上が死亡し、海峡の両端のカラブリアとシチリアはこの地震で発生した津波で壊滅的被害を受けた。
また海も激しく荒れている。海流は非常に強く、海底の海藻がはぎ取られることもある。米航空宇宙局(NASA)によると、海流は6時間ごとに変化し、力強い波紋が宇宙からも見えるという。
ウィービルドの当初の計画では、橋のデッキは最大風速約83メートルの強風にも耐えられるように建設され、最大風速約42メートルでも開放可能とされていた。橋の建設工事の入札はその後行われておらず、今後も行われない可能性もあり、このウィービルドの計画が現在検討されている唯一の計画だ。
橋は片側3車線で、2車線が通行用、1車線が緊急用で、真ん中に鉄道の線路が設置される。現在の計画では、毎時6000台の車やトラックが通行でき、さらに毎日200本の列車が通過可能だ。
橋は海面から約74メートルの高さに位置し、600メートルの航行チャネルが確保されているため、貨物船や最も高さのあるクルーズ船でも通過できる。またM7.5の地震にも耐えられる設計になっている。