米ジェットゼロ、翼胴一体型デザインで排出量削減を目指す
米航空宇宙局(NASA)は、この形状は「航空機の燃費の向上に役立つのと同時に、機体の中央部により大きな積載(貨物または乗客)スペースを生み出す」としている。NASAは、同局の実験機の一つ「X―48」を使ってBWBの試験を行ってきた。07年から12年にかけて、無人かつ遠隔操作可能な2機のX―48を使って、120回を超える試験飛行を行い、BWBの実現可能性を実証した。
NASAは、このBWB旅客機は、ボーイング747よりも翼幅(よくふく)がわずかに長いだけなので、既存の空港ターミナルでも運用可能とし、さらに同程度の高度な機能を有する既存の輸送機よりも重量が軽く、騒音やCO2排出量が少なく、運用コストも安いと付け加えた。
エアバスも20年に全長約6フィート(約1.8メートル)の小型のBWB試作機を作っており、将来フルサイズのBWB航空機を作ることにも関心があると見られる。
では、このブレンデッドウィングという形状が非常に効果的であるにもかかわらず、なぜまだこの形状の飛行機が製造されていないのか。
この疑問についてオリアリー氏は、この形状には飛行機メーカーに二の足を踏ませる、ある大きな技術的課題があると指摘する。その課題とは非円筒型の胴体の与圧だという。
オリアリー氏によると、円筒形の飛行機の方が、飛行中に繰り返し発生する胴体の膨張と収縮への対応に優れているという。
「チューブ・アンド・ウィング型の場合、荷重が分離され、胴体には与圧荷重、翼には曲げ荷重がそれぞれかかるが、ブレンデッドウィングの場合は、基本的にこの二つの荷重が一体化する。現時点では、軽くて強い複合材料によってのみ実現可能だ」とオリアリー氏は言う。
またオリアリー氏は、BWB旅客機は現在の広胴型機と比べても胴体の幅が圧倒的に広いとし、さらに次のように続けた。
「一般的な単通路型航空機の座席は、左右に3席ずつの配置になっているが、BWBの胴体は短く、幅が広い。乗客数は同じだが、各航空会社の配置の仕方によって、座席の横の列が15列か20列になる可能性もある」