TikTokでスキー場「侵略」の呼びかけ、殺到する集団を警察が阻止 イタリア
(CNN) 動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)で200万のフォロワーをもつインフルエンサーの女性と、イタリアのスキー場との間で対立がエスカレートしている。発端は、自分の投稿が原因でスキー場が混乱に陥ったと非難された女性が、別のスキー場の「侵略」を呼びかけたことだった。
9日には日帰り客で満員のバス数台が、ナポリを出発する前に警察に阻止された。日帰り客らはSNSインフルエンサーのリタ・デ・クレシェンツォさんの呼びかけに応えて、イタリア中部アブルッツォ州にあるオビンドリのスキー場に向かおうとしていた。
2週間前、近くにあるロッカラーゾのスキー場では、デ・クレシェンツォさんの投稿を見た日帰り客1万人あまりが詰めかけて混乱状態に陥っており、そうした事態の再発を防ごうと、警察が対応に乗り出した。
ロッカラーゾに殺到した日帰り客の中にはゲレンデのマナーを知らないスキー客も多く、ごみを放置したりゲレンデでバーベキューをしたりするなどの迷惑行為が横行。シーズンパスをもつ常連客はリフトの利用が困難になった。
ロッカラーゾの混乱の責任は自分にあるととがめられたデ・クレシェンツォさんは、むしろスキー場を無料で宣伝した対価を受け取ってもいいくらいだと反論。この騒ぎでさらに10万人増えたフォロワーに向けて、オビンドリを目指そうと呼びかけた。
この呼びかけに乗じてナポリの旅行会社数社が昼食と入場券込みで約20ドルの日帰りツアーを売り出した。バスの往復のみのツアーも売り出された。
しかし混乱は阻止された。ナポリの当局によると、ロッカラーゾとオビンドリの市長がそうしたバスは追い返すと通告したことを受け、警察が介入に乗り出した。
ナポリ警察は、スキー場への入場を許可されていないバス数台を阻止したことを明らかにした。バス2台は、乗客が誰もスキー場の入場券を持っていないという理由で止められた。
気温が上がって標高の低い場所ではほとんどの雪が解けていたことも、混乱を回避する助けになった。
オビンドリの市長は、2週間前のロッカラーゾの事態を受けて対策を検討していたと説明。「しかし彼女がフォロワーを挑発してここへ来させようとしたことから、我々に選択肢はなくなった」と語った。
オビンドリは以前から人気のスキー場だった。しかしSNSがこれほどの影響を及ぼすとは考えてもみなかったとアブルッツォ州の首長は打ち明ける。
州は警察に出動を命じて軍にも応援を要請し、スキー場へ向かう要所で検問に当たらせて、住民を除いてスキー場やホテルの予約がない客は引き返させるよう指示した。
今回のようなTikTokトレンドは、実はスキーには無関心で、ただ自分たちの姿をSNSに投稿したいだけという集団を呼び寄せてしまうと当局者は指摘している。