盗まれた旅客機は原型とどめず、空港警備の隙を露呈 米シアトル
(CNN) 米航空会社の地上職員がシアトルの空港から盗んだ旅客機を墜落させて死亡した事件で、米国家運輸安全委員会(NTSB)は12日、同機が原型をとどめないほど粉々に破壊されていたことを明らかにした。一方で、テロ関連ではなかったとみられているが、主要空港でこれほどの重大事が起きた原因の究明が進められている。
NTSBによると、同機は高さ約30メートルの樹木数本の間を突き抜け、残骸はバラバラの破片になって現場に散乱していた。「翼などの部分を除けば、航空機とは分からないほどだった」としている。
米ホライゾン航空の地上職員だった男(29)は10日夜、シアトル・タコマ国際空港のメンテナンス場にあった76人乗りの航空機を無断で操縦して発進させ、軍のF15戦闘機2機に追跡されながら約1時間にわたって飛行を続けた末に、島の森林の中に墜落した。
ピアース郡保安官事務所によると、乗っていたのはこの職員のみ。保安官事務所は自殺だったと形容しているが、詳しいことは明らかにしていない。
NTSBは現場からフライトデータレコーダーを回収した。焼け焦げてはいるものの、中身は無事だという。14日には首都ワシントンに到着して解析に着手する見通し。
職員の遺族は11日夜に発表した声明で、「人を傷つける意図はなかった」と弁護した。元同僚も、明るく愉快で「いいやつだった」と振り返った。
ホライゾン航空には3年半前から勤務しており、離発着する航空機の誘導や手荷物の処理などを担当していたという。パイロット免許は持っていなかったと思われ、どうやって操縦を覚えたのかは不明
米国の大手空港から商用機が盗まれた今回の事件は、空港警備に存在する重大な隙を露呈させた。米連邦捜査局(FBI)は、今回の事件はテロ関連ではなかったと見ているが、当局は主要空港でこれほどの重大事が起きた原因の究明に力を入れる。