警官の黒人女性射殺、12億円で和解 警察改革を約束 米ケンタッキー州
(CNN) 米ケンタッキー州ルイビルで黒人女性のブレオナ・テイラーさんが警官に射殺された事件をめぐり、ルイビル市がテイラーさんの遺族に1200万ドル(約12億6400万円)を支払うことなどを盛り込んだ和解が成立した。市と遺族側が15日に共同記者会見を開いて発表した。
記者会見にはルイビルのグレッグ・フィッシャー市長とテイラーさんの母タミカ・パーマーさん、遺族側弁護士などが出席した。26歳だったテイラーさんは、今年3月13日、自宅に踏み込んだ警官に撃たれて死亡した。
和解合意に基づき、市は抜本的な警察改革を断行するほか、警官が地元に住むことを奨励する制度や、ソーシャルワーカーが警察の一部職務を支える制度を創設する。捜索令状については、裁判所に申請する前に責任者が内容を確認して許可を出すことを義務付ける。
市長の広報は1200万ドルの和解金について、同市がこれまでに支払った中では最高額となることを確認した。遺族側弁護士は「歴史的な」和解金と位置づけ、警察に殺害された黒人女性に対する和解金としては過去最大級の額になるとしている。
フィッシャー市長は、市が不法行為を認めたわけではないとした上で、「パーマーさんの痛みは想像さえできません。ブレオナさんの死について、心からお悔やみ申し上げます」と語った。
この事件では、ルイビル警察の警官が麻薬捜査の目的で捜索令状を取り、深夜に扉を破ってテイラーさんの自宅に踏み込んだ。合法的に銃を所持していたテイラーさんのボーイフレンドは、何者かが侵入したと思って発砲したと話している。ボーイフレンドの銃撃で警官1人が負傷し、警察側が銃を撃ち返してテイラーさんが死亡した。
ルイビルでは警察に対する抗議デモが何カ月も続き、米全土で人種差別や警察の黒人への暴力に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が一層広がった。6月にはルイビル警察の警官による別の銃撃事件を受けて警察トップが解任され、ルイビル市議会は「ブレオナ法」を可決して、事前予告なしで家宅捜索ができる「ノックなし令状」を禁止した。
ただ、テイラーさんの事件にかかわった警察官は、まだ1人も罪に問われていない。黒人として初めて州検事総長に就任したケンタッキー州のダニエル・キャメロン検事総長は、この事件に関する特別検察官に任命され、米連邦捜査局(FBI)も捜査に乗り出している。
遺族側は15日の記者会見でも、引き続き事件にかかわった警官の訴追を訴えた。このうちの1人は6月下旬に免職処分となっている。