脱線ばかりの第1回大統領討論会、6つのポイント
「黙っていてくれないか?」
バイデン氏はトランプ氏の煙に巻くような回答や自身の発言に割って入る姿勢に目をむいたり、首を振ったり、含み笑いを浮かべるなどして反応。怒り出すことはなかったが、トランプ氏を軽く見ていることは明らかだった。
討論会が始まって18分経ったところで、トランプ氏の度重なる遮りに「黙っていてくれないか?」と発言。後に税や経済について議論した際には「あなたは米国史上最悪の大統領だ」とも述べ、また「この道化師と一緒では口をはさむことも難しい」とこぼす場面もあった。
人種に関する議論の最後には、ぶっきらぼうに「彼は人種差別主義者だ」と言い切った。
家族の問題
討論会が中盤に差し掛かったところで、トランプ氏は顧問から取り上げるべきだと言われたという話題を切り出した。バイデン氏の次男、ハンター・バイデン氏の話だ。
トランプ氏やその側近は、バイデン氏やその息子がウクライナで汚職に関与したと根拠のない主張を繰り返している。
共和党員はこの件が今年の選挙運動のどこかの時点で話題をさらうだろうと信じていた。だが、世界的なコロナウイルスの流行や都市での暴力、経済減速に見舞われる中、この話題は注目を浴びていない。
ただ民主党員の中にも、この話題が出てきたらバイデン氏がどう対応するのか注目する者がいる。さらには繊細な家族の問題に冷静さを失うのではないかとの懸念の声もあった。
それでもバイデン氏は準備ができていた様子で、ウクライナのエネルギー企業で役員を務めていた次男について、違法行為に関与していたとするトランプ氏の主張に対し、カメラをまっすぐ見つめて否定した。
「ここは私の家族や彼(トランプ氏)の家族に関するものではなく、米国民の家族に関する討論会だ」「彼は国民が必要とすることについて話したがらない」(バイデン氏)
しかしトランプ氏はあきらめず、再びこの話題を持ち出した。バイデン氏がトランプ氏を批判しようと米国の戦没者を「負け犬」などと呼んだ報道に触れた際、同氏は亡くなった長男のボー・バイデン氏の名を挙げた。ボー氏はイラクでの従軍経験があり、2015年に脳腫瘍で死去した。
このときトランプ氏は軍に関する発言の報道に反論する代わりに、「ボー・バイデンは知らない」と述べて矛先をハンター氏に向けた。
トランプ氏はハンター氏に対して過去の薬物依存の問題などで攻撃した。バイデン氏は再びカメラを見つめて、トランプ氏が遮ろうとするのも構わずこの件について語った。
「私の息子は薬物の問題を抱えていたが、それを乗り越えた。私は彼を誇りに思う」(バイデン氏)
バイデン氏が個人的な部分を垣間見せた瞬間だった。その印象は強烈で、薬物やアルコール依存に悩む家族を抱える数百万人の国民にとっては同氏との間に心のつながりを築くきっかけとなったかもしれない。