礼節と内容ある討論会に、コロナ対応で副大統領候補が応酬

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民主党候補のカマラ・ハリス上院議員(左)と共和党候補のペンス副大統領が政権のコロナ対応で応酬を交わした/CNN

民主党候補のカマラ・ハリス上院議員(左)と共和党候補のペンス副大統領が政権のコロナ対応で応酬を交わした/CNN

(CNN) 11月の米大統領選に向けて7日夜にユタ州ソルトレークシティーで行われた副大統領候補による討論会は、共和党候補のペンス副大統領と民主党候補のカマラ・ハリス上院議員がトランプ政権の新型コロナウイルス対応を巡って大きく異なる評価を示し、応酬を繰り広げる展開となった。

今回は大失敗に終わった先週の大統領候補の討論会とは打って変わって、礼節と中身のある議論となった。先週の討論は、共和党候補のトランプ大統領が民主党候補のバイデン前副大統領の発言をたびたび遮って割り込む状況だった。

大統領が新型コロナウイルス感染症と診断され、大統領周辺や共和党内にも感染が拡大する中、今回の中心議題はコロナ対応となった。

ハリス氏は冒頭、新型コロナで国内では約21万人が死亡し、750万人以上が感染している現状を指摘し、トランプ政権の対応を糾弾した。

ハリス氏は「米国民は今、この国の歴史上最大の政権の失敗を目の当たりにしている」と発言。トランプ大統領がウイルスの深刻さを繰り返し小さく見せようとし、国民のマスク着用を思いとどまらせるような行為をしてきたと主張した。

また「5軒に1軒、店舗が閉じた。最前線の従事者がいけにえのように扱われ、この数カ月で3000万人が失業申請をしたのを見てきた」と言及。1月末時点で、トランプ氏やペンス氏がウイルス流行の致死性や空気中の伝播(でんぱ)の情報を知っていながら、「国民に言わなかった。知っていたのに隠ぺいした」と批判した。

ペンス氏は、政権は全力を尽くして対応してきたと擁護し、コロナ対応に取り組む各州に多大な支援を行ったと強調した。

ペンス氏は「我が国は今年大きな試練のときを迎えている」との現状認識を示した上で、「トランプ大統領は最初から国民の健康を第一においてきた」と述べた。

さらに、感染拡大が始まった今年の初めに大統領が中国人に対する入国制限措置に踏み切ったことを称賛した。当時バイデン氏はこれを外国人嫌悪だと批判していたが、このおかげで「第2次世界大戦以来の国家総動員体制を立ち上げる貴重な時間」が得られたと主張。検査態勢を整えて「数十万人の米国民の命を救ったと信じている」と述べた。

また、バイデン氏のコロナ対応計画はトランプ政権の計画の盗用だと批判。「検査の拡充、個人防護具の製造、ワクチン開発をうたう彼らの計画は、ちょっと盗んだもののように見える。バイデン氏は少し覚えがあるだろうが」と述べ、1988年の大統領選でバイデン氏の活動を終わらせた盗用スキャンダルをほのめかした。

ペンス氏はまた、ハリス氏がワクチンの安全性を疑問視していることに言及。そうした姿勢はトランプ氏がワクチン生産の早さを政治問題化しているとの認識によるものだと指摘し、「あなたはワクチンに対する市民の信頼を損ね続けている」と批判した。

民主党候補のカマラ・ハリス上院議員(左)と共和党候補のペンス副大統領が政権のコロナ対応で応酬を交わした/CNN
民主党候補のカマラ・ハリス上院議員(左)と共和党候補のペンス副大統領が政権のコロナ対応で応酬を交わした/CNN

最高裁、医療保険、投票制度も焦点に

トランプ政権による連邦最高裁のギンズバーグ判事死去に伴う後任指名についても、ペンス氏とハリス氏は激突した。

ハリス氏は、11月の選挙で民主党が連邦議会で過半数の議席を押さえた場合に最高裁の判事を増員するかどうかについて、自身の見解を示さなかった。

ハリス氏は選挙が行われようとしている中、共和党は後任指名の承認を行うべきではないと主張。トランプ氏が指名したエイミー・コニー・バレット連邦控訴裁判事は、共和党が計画するスケジュール通りに承認を進めれば最高裁判事に就くと見られている。

ペンス氏はハリス氏に対して、もしバレット氏が承認されれば民主党は最高裁判事を現在の9人から増員するつもりなのかと繰り返し質問。民主党は選挙で勝てば増員するつもりだろうとの認識を示した。

ハリス氏はこの点、話題をトランプ氏の裁判所の指名人事が多様性に欠けるとの話題にずらし、またバレット氏の承認は投票が間近の米国民の意思をないがしろにするものだと主張した。

ペンス氏はこれを受けて、「彼女はこの質問に決して答えなかったと記録に残しておいてほしい」と述べた。

医療保険でも両者はぶつかった。

ハリス氏は、大統領選の1週間後に口頭弁論が開かれる医療保険制度改革法(オバマケア)に対する訴訟で、最高裁により同法が無効とされる可能性に言及した。もしトランプ氏によるバレット氏の指名人事が承認されれば最高裁判事は保守系が6対3で多数派をさらに固め、既往症の国民を守る条項を含めオバマケアはさらなる危機を迎えると主張した。

ペンス氏は、ハリス氏が既往症を持つ人々に向けてオバマケアの必要性を訴えたことに対して、「あなたの独自の意見を言う権利はあるが、あなたの独自の事実を言う権利はない」と述べ反論した。

投票の不正にも話は及んだ。ペンス氏はトランプ氏の投票の不正に関するうその発言を支持し、平和的な権力移行への約束を避けて「自由で公正な選挙でなければらない」と語った。

トランプ氏が選挙結果を受け入れない場合にどうするかとの質問に正面から答えず、11月の選挙でトランプ氏が勝つと信じると発言。矛先を民主党に向け「民主党はこの3年半、前回選挙の結果を覆そうとしてきた」と述べ、トランプ氏の弾劾(だんがい)裁判へとつながったロシアの選挙介入疑惑の捜査などに言及した。

「我々はこの選挙に勝つ。トランプ大統領と私は、バイデン氏とハリス氏がルールを変更し、大規模な投票の不正の機会を作り出そうとするのを阻止するために、毎日裁判所で戦っている」(ペンス氏)

トランプ氏擁護に回ったペンス氏

ハリス氏はトランプ氏のコロナウイルスの診断に絡んだ健康記録の透明性に関する質問から、連邦所得税の支払いへと話題を展開。トランプ氏が2000年からの15年間のうち10年間は所得税を納めておらず、16年と17年にはそれぞれ750ドルの納税額にとどまっていたと報道された点を攻撃した。

「米国大統領であり最高司令官である人物が誰にお金を借りているのかを知ることは本当に望ましいことだ」と述べた。

ペンス氏は首を振って、トランプ氏が報道は「正確でない」と述べていたと主張。トランプ氏は税金で何千万ドルも支払い、開示資料も多く提供してきたと述べた。

経済に関しては、ペンス氏はトランプ氏の実業界での経験がコロナ流行前までの強い経済の構築を助けてきたと発言。バイデン氏の経済政策を、労働者の税金を引き上げて経済回復を損ねると批判した。ホワイトハウスも連携し議会で承認されたコロナ対応の支援策も擁護したが、前日にはトランプ氏は次の景気刺激策での交渉を打ち切りにするツイートを行っていた。

中国に関しても両者の応酬があった。ハリス氏は「あなた方は貿易戦争に負けた」と述べ、トランプ政権下で製造業で30万人が職を失い、農家は破産へと追い込まれたと批判した。

一方ペンス氏は、バイデン氏が中国との恒久的な通商関係正常化での賛成票を投じ、中国が世界貿易機関(WTO)への加盟やそれに続く爆発的な経済発展を遂げることを可能にしたと述べた。

ペンス氏は「中国との貿易戦争に負けた? バイデン氏は戦ったことが一度もない。バイデン氏はこの数十年間中国のチアリーダーだった」と述べた。

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