米国の大統領選や連邦議会選の仕組みは? CNNが解説
(CNN) まもなく実施される米大統領選であなたが本当に疑問に思っていることは何だろうか?深夜にブラウザーの検索窓にどんなキーワードを打ち込んでいるだろうか?
CNNは米大統領選に関して世界で検索されている上位のキーワードを抽出した。今年の選挙で起きることやその仕組みについて、知っておくべきポイントをまとめた。
選挙はいつ始まるの?
すばらしい質問だ!
簡単な答え:連邦法で定められた「選挙の日」だ。11月の最初の月曜日の次の火曜日と決まっていて、今年は11月3日に当たる。
よりよい答え:11月3日の数週間前からだ。多くの米国民が事前に、または郵便で投票する。今年は新型コロナウイルス感染症(Covid―19)の影響でより多くの国民がそうするだろう。
最良の答え:何カ月も前から始まっている。主要政党の共和党と民主党は、各党の大統領候補を指名する予備選から選挙戦をスタートする(共和党はトランプ大統領、民主党はバイデン前副大統領を候補に選んだ)。こうした候補を決める予備選は2020年初頭からスタートし、夏までには大部分が終了する。
さらに重要な点:他にも重要な選挙が大統領選と同時に行われる。任期2年の連邦議会下院は全435議席が選挙の対象となる。また任期6年の連邦議会上院100議席のうち一部の選挙が行われる。上院と下院を支配する政党はワシントンで絶大な権力を握ることとなり、新たに選出される(または再選される)大統領が残せる実績に重大な影響を及ぼす。
選挙はいつ終わるの?
簡単な答え:11月3日だ。ただ、アラスカ州で最後の投票所が閉まるのは東部時間で午前0時を回ることになる。
よりよい答え:全ての票が数えられたときだ。
最良の答え:今年は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響で郵便投票が盛んで、当選者の把握には1日以上時間がかかる可能性がある。候補者が大勝する場合はすぐに結果が明らかになるだろう。だが、どの陣営も負けたと完全に確信するまでは敗北を認めないだろう(2000年の大統領選でアル・ゴア氏がジョージ・W・ブッシュ氏に敗北宣言の撤回を伝えたことが思い起こされる)。
「選挙の日」はなぜ11月のある火曜日と決まっているの?
これは憲法ではなく、法律で決まっている。連邦議会は1845年にこの日を設定した。
選挙日が延期や変更となる可能性はある?
パンデミックが起きている今年、この質問は興味深い。選挙の日は法律で定められているため、その延期や変更には連邦議会が法律を変え、大統領が承認する必要がある。それは起こりそうにない。
誰が投票できるの?
これはとてもよい質問だが、複雑でもある。特に共和党と民主党が投票用紙へのアクセスについて争っている今年はそうだ。
簡単な答えは、憲法修正26条で18歳から投票権があるとの規定がある。18歳以上の市民は声を聞いてもらう権利がある。
だが、その他にもさまざまな事柄がある。まず、有権者は大統領を直接選べない。大統領を選ぶのは「選挙人団」だ。選挙人団は各州からの代表(選挙人)からなり、一般投票の結果に従って投票する。従って、一般の市民は、誰がその州の選挙人の票を勝ち取るのかを決めるための投票を行っているということになる(詳しい解説は後述)。
選挙のルールは各州で異なり、州内でも異なる可能性がある。
近年では一連の新たな州法が投票をより難しくしようとしている。そうした法律の支持者は選挙の不正への懸念を口にするが、研究結果からは選挙の不正は極めてまれな事象だと判明している。いくつかの地域では、そうした法律は身分証明書の提示を要件に定める。これらは不適格な者を投票から除外しようとする試みだが、こうした制限が有権者抑圧の一形態に当たると反対する声も上がっている。
また、バーモント州とメーン州では受刑者も投票できるが、他の地域ではそうではない。フロリダ州では2016年に重罪歴がある者に投票権を認める提案が住民投票で承認されたが、その後は州政府を運営する共和党により動きが遅い状態だった。
それに加え、奴隷制や抑圧の歴史的汚点もある。有色人種の人々は当初は奴隷として、その後は識字テストや人頭税を通じて投票権から遠ざけられた。また、女性も全ての州で投票権が認められたのは1920年だった。
さらに自治領の話がある。プエルトリコの市民は米国民ではあるが、選挙人団の票は持たない。予備選には参加できるものの、11月の大統領選では声は届かないことになる。
投票用紙に記載されているのは何?
簡単な答え:11月の選挙では大統領と連邦議会への投票のほか、州や地元自治体の投票も行われる。その投票用紙の内容は州や市によって異なる。
詳細な答え:米国の州にいる市民はみな大統領選に投票できるが、その選択肢は州によって異なる。民主党候補のバイデン氏と共和党候補のトランプ氏は全ての投票用紙に記載されているが、少数政党の候補者も記載されているだろう。どんな候補者が投票用紙に載るかは各州のルールによって異なる。
米国の州の人はみな、連邦議会の議員にも投票する。また首都ワシントンDCの住民は連邦議会に送り込む投票権のない代表者1人を選ぶ。プエルトリコも同様に投票権のない代表者1人を選ぶ。
米国の各州には2人の上院議員がいる。人口がワイオミング州のように少ない州でも、カリフォルニア州のように多い州でも議員数は2人だ。任期は6年で、2年ごとに3分の1の議席が投票の対象となる。
いくつかの州では州知事選も行われる。多くの投票用紙には州と地元自治体の選挙の双方が記載されている。州の中には住民投票を実施するところもあり、それに地元自治体の住民投票も加わることもある。もう一度言うが、これらは地域によって全て異なる。
投票用紙のサンプルがほしければ、地元自治体や州務長官の事務所にアクセスするといいだろう。
連邦議会の上院議員はどのように選ばれるの?
各州ごとに一般投票により選出される。ただ、現在の制度は憲法の制定当時に描かれていた姿とは違う。上院議員は当初、州議会によって選ばれていた。制度の起草者は上院を世論から守りたかった。だがこれはひどい腐敗の温床になるとわかり、100年以上の時を経て1913年に修正憲法第17条で憲法を修正。国民が上院議員を選ぶことになった。
連邦議会の下院議員はどのように選ばれるの?
各下院議員選挙区ごとに一般投票で選ばれる。だが、全ての選挙区が平等に線引きされているわけではない点は言及に値する。10年に1度の国勢調査(2020年にも実施)で、各州がいくつの選挙区を持てるかが決まる。
政党は長年、自党に有利なように州内の選挙区を線引きしようと競ってきた。政党は州内で過半数の議席を固め、また現職を守ろうとするために、創造的ともいえる線引きを行ってきた。ある政党に有利なようにゆがんだ線引きをすることは「ゲリマンダリング」と呼ばれ、多くの訴訟の対象となってきた。州の中には線引きをより公正に行おうと、選挙区の引き直しをする党派によらない、または超党派の委員会を設置しているところもある。
全米での人口の偏りは少しおかしな状況も生み出している。ワイオミング州の唯一の下院議員選挙区は60万人未満にとどまるが、カリフォルニア州やテキサス州の議員区は70万人を超えている。
2020年の国勢調査を受けて行われる「議席の再配分」により、各州の議席が人口変化に応じて増減するだろう。
大統領はどのように選ばれるの?
これはかなり複雑だ!
選挙は各州が実施するが、どの州でも共和党と民主党の大統領候補は投票用紙に記載がある。選挙はこの両党の間で行われるとの法技術的なルールはないが、事実上そうなっている。両党は通常、大統領選がある年の1月から始まる一連の予備選を経て候補者を指名する。
全ての州で11月の第1月曜日の後の最初の火曜日に本選が行われる。そして、州単位で選挙に勝利した者に基づき選挙人が選ばれ、選挙人が選挙人団として票を投じる。
各州の選挙人は12月の第2水曜日の後の最初の月曜日に州都に集まり、大統領と副大統領の投票をする。
そして、その結果を12月23日までに首都ワシントンの連邦議会に送る。
各州の選挙人の票は全て、州の勝者に与えられる。ただ、メーン州とネブラスカ州は例外だ。両州では選挙人の票のうち2票を州全体の勝者に、残りの票(その票数は下院議員選挙区の数と同じ)を下院議員選挙区ごとの勝者に分配する。
選挙人団の投票は1月6日、現職の副大統領により議会で読み上げられて集計される。
その後何か問題があれば解決するための2週間の猶予があり、1月20日に新しい大統領が就任する。
選挙人の投票は一般投票に基づいたものになるの?
いいえ。2016年の大統領選で一般投票ではヒラリー・クリントン氏が得票数が多かったのにトランプ氏が勝利して大統領となったのはそのためだ。これはジョージ・W・ブッシュ氏とアル・ゴア氏の戦いでも同様で、ほかにも少数ながら例はある。より人口の少ない小さな州に恩恵を与えるこのシステムは、米国民の大半が選挙権を得る前に作られた。このシステムはかつて、南部の州が代表者数の決定の際には奴隷の人々の人口をカウントする一方、投票権自体は一定の白人男性にしか与えない状況を作り出した。
今日、米国民は大統領を選ぶために投票を行っているが、それは大統領を最終的に選ぶ選挙人を選んでいる作業となる。選挙人の数は1964年から538人で、勝利するには270人が必要となる。各州の選挙人の人数はその州が連邦議会で持つ議席数と等しい(上院2議席に下院で各州が持つ議席数を加えた数)。そのため、ワイオミング州の選挙人は3人、人口最大のカリフォルニア州の選挙人は55人となる。
選挙結果が発表されるのはいつ?
選挙管理の当局者は通常、各地区の投票が締め切られたときから開票作業と報告を始める。あなたも徐々に投票結果が出てきて、CNNのようなメディアがかなり早期に勝利予測を出すのを見たことがあるだろう。または候補者の誰かが敗北宣言をするのを聞いたことがあるかもしれない。
比較的大きなニュースメディアは、選挙当日の夜に開票結果や出口調査、他の既存のデータを踏まえて、勝利が予想される候補者を発表することが多い。ただ、十分な情報がない場合は、勝者の判明まで長い時間がかかることもある。
大統領選については、当日中に誰が勝者なのかわかるのが通常だ。だが今回は郵便投票や不在者投票の数が増えたため、集計にかなりの時間がかかる可能性がある。前述したように、正式な大統領選出のプロセスは何カ月もかかり、厳密に言えば1月6日まで勝者は宣言されない。だがそれは、何らかの支障が生じない限りは法律上の細かい話に過ぎない。
選挙が引き分けで終わることはあるの?
あるともいえるし、ないともいえる。最終的には大統領が誕生するという意味では引き分けでは終わらない。ただその過程において、選挙人団の投票が引き分けとなる可能性はある。もしどの候補者も選挙人の票を270票を獲得できない(または2人の候補者が269票を獲得する)場合は、下院が大統領を選出することとなり、各州の代表団は1票を持つ。候補者の1人が過半数を得るまで下院はそれを続ける。
歴史好きの人なら1824年の選挙を調べるとよい。一般投票の票数や選挙人の票数ではアンドリュー・ジャクソンが勝っていたが、下院が大統領に選んだのはジョン・アダムズだった。
勝者が就任するのはいつ?
2021年1月20日水曜日正午だ。カレンダーに印を付けておこう。