米俳優ビル・コスビー氏、性的暴行の有罪判決破棄で釈放
裁判では昨年12月、コスビー氏が民事訴訟の証言録取に応じたのは、当時の検事が刑事訴追をしないと約束したからだとの主張が行われた。この証言録取でコスビー氏は催眠剤「クエイルード」を調達し、自分が性行為をしたいと思った女性が目的だったと認めていた。
州最高裁は、当時の担当検事は、コスビー氏がコンスタンドさんに薬を盛ってレイプしたことを合理的な疑いを越える程度に証明できないと考えたと言及。コンスタンドさんに「いくらかの正義を実現する手段」として、訴追をしないかわりに、偽証すれば罪に問われる民事訴訟での証言をしてもらうことを決めたと指摘した。
この証言録取は14年になって明らかになり、後任検事の1人が証言録取でコスビー氏が話した内容を刑事裁判で使った。
裁判官は別の救済策も考えたものの、方法は1つしかなかったと言及。「彼は釈放される必要がある。これらの特定の罪に関する将来の訴追は禁止される」と述べた。
CNNの法律専門家で連邦及び州検察官の経験があるエリー・ホニグ氏によると、州最高裁の判断を覆せるのは連邦最高裁しかない。だが、「裁判所はこの被害者について再度裁判をすることを禁じた。他の被害者の多くは時効が過ぎている」として、連邦最高裁がこの事件を取り上げる方法がないと指摘した。
コスビー氏には数十人の女性が性的な不法行為を受けたと告発したが、刑事訴追に至ったのはコンスタンドさんの主張だけだった。
コンスタンドさんは暴行を受けたとする1年後の05年に警察に被害を届け出た。結局訴追には至らず、民事訴訟で和解金338万ドル(現在の為替レートで約3億8000万円)の支払いで合意した。
だが15年にコスビ―氏から被害を受けたとする女性が次々に名乗り出てきたこと受け、新たに着任したスティール検事が訴追を行った。
事件はコンスタンドさんの証言が中心となった。証言では、テンプル大学女子バスケットボールチームの関係者だったコンスタンドさんが、同大の有力理事だったコスビー氏にキャリアの助言を得ようと自宅を訪問し、薬を盛られ性的暴行を受けたと説明した。
検察側は法医学的証拠に乏しく、コンスタンドさんの証言に頼る形となった。数十年前に暴行を受けたとする女性5人も証言台に立ち、コスビー氏の行為はこうしたパターンの一部だと証明しようと試みた。
一方、コスビー氏の弁護団はコンスタンドさんの証言の信頼性を疑い、同意の上の行為だったと反論。コンスタンドさんがコスビー氏の財産の一部を狙っているとも主張した。
陪審団は18年4月、コスビー氏に対し3つの加重強制わいせつ罪で有罪評決を下していた。