米俳優ビル・コスビー氏、性的暴行の有罪判決破棄で釈放
(CNN) 米俳優でコメディアンのビル・コスビー氏(83)が女性に対する性的暴行の罪に問われた裁判で、ペンシルベニア州最高裁判所は30日、法的な適正手続きに違反があったとして、コスビー氏に対する有罪判決を破棄した。
「アメリカの父」ともうたわれたコスビ―氏は、セクハラ告発運動「#MeToo」運動で最初に刑事裁判を受ける著名人となった。2004年に自宅を訪れたアンドレア・コンスタンドさんに薬物を盛って、性的に暴行した疑いで起訴されていた。
州最高裁はモンゴメリー郡地方検事の05年の決定に言及し、コスビー氏が民事訴訟で証言録取に応じる代わりに同氏を訴追しないとした決定が今回の裁判でコスビー氏を攻撃する材料に使われたと指摘。「こうした状況に照らすと、その後後任の地方検事がコスビー氏を訴追する決定は、コスビー氏の適正手続きの権利を侵害した」と判示した。
コスビー氏は18年に有罪評決を受けて3~10年の禁錮刑を言い渡され、州刑務所に3年間服役していた。判決を受けてコスビー氏は釈放された。
コスビー氏は30日、白いTシャツ姿で自宅前に短時間現れたが、報道陣に言葉を発しなかった。ツイッターには写真付きの投稿を行い、支持者に感謝を伝えた。
コスビー氏の弁護士は「彼は家に戻れてとても喜んでいる」「家族全員にとってつらい3年間だった」と述べた。
被害を訴えた女性3人の代理人を務めるリサ・ブルーム弁護士は、判決は被害者の「顔を殴るもの」と批判。告発者の一人、ビクトリア・バレンティーノさんは「憤慨している」とコメントした。
他の告発者を代理するグロリア・オルレッド弁護士は、法技術的な理由での有罪判決の破棄はコスビー氏の汚名をそそぐものではないと発言。「私の心は刑事事件で勇敢に証言してくれた人々とともにある」と述べた。
訴追を担当したケビン・スティール地方検事も、コスビー氏が釈放された手続き的な問題は「犯罪の事実とは関係ない」と指摘。「被害者のアンドレア・コンスタンドさんが名乗り出た勇気をたたえたい」「同様の体験を共有した他の女性全員も同様だ」と述べた。