(CNN) 米連邦捜査局(FBI)によるドナルド・トランプ氏とロシアの関係の調査が始まった発端について捜査を進めるジョン・ダーラム特別検察官が、先週末に裁判所に謎めいた書面を提出し、右派の怒りに火をつけた。
提出された新たな書面は、2016年大統領選で民主党候補のヒラリー・クリントン陣営の弁護士を務めたマイケル・サスマン被告に対する訴追内容を肉付けするものだった。サスマン被告はFBI幹部との会合で、当時候補者だったトランプ氏とロシアのつながりについて、幹部にうそをついた疑いがかけられている。ダーラム氏は書面の中で、サスマン氏の仲間がトランプ政権のホワイトハウスに探りを入れるために、政府のデータベースを「悪用した」と示唆した。
これを受けトランプ氏を支持するメディアは報道の嵐となり、共和党議員やトランプ氏本人も怒りを爆発させた。それらは歪曲(わいきょく)や誤った主張、誤情報であふれたものとなった。
サスマン被告の弁護士は14日に反論を提出し、ダーラム氏は重要な事実について誤っていると主張。データは適切に取得されたものであり、トランプ政権が始まる以前のものだったと述べた。また、ダーラム氏が右派メディアに向けて故意に誤った話をしたとも批判した。
本件に関係したサイバー分野の研究者は、自分たちは非政治的な行為者であり、発見したデータから国家安全保障上示唆されることに懸念を抱いていたと述べている。また、ダーラム氏が自分たちの電子メールから都合のいいものを選び出し、自分たちがトランプ氏とロシアについて根拠のない話を作り上げたように見せているとも話す。
5年以上前に始まった本件の最新の展開を以下で解説する。
ダーラム氏が新たに提示した内容は?
ダーラム氏は以前、サスマン被告が16年にトランプ氏にダメージを与えようと、サイバーセキュリティーの研究者やデータサイエンティストと協力していたと指摘していた。サスマン被告がトランプ氏とロシアのつながりでスキャンダルを掘り起こし、メディアや米当局に売り込むことで、捜査が始まることを期待していたとされる(サスマン被告はFBI幹部に対する虚偽の陳述で訴追されているが、罪状を否認している。裁判は今年、事実審理に入る予定)。
ダーラム氏は、こうした研究者が「DNSルックアップ」と通常呼ばれる、ドメイン・ネーム・システムのデータを調べていたと述べた。これは電話帳で電話番号を探す行為に似たもので、コンピューターがサーバーとつながる準備ができるときにログ(記録)が作られる。ただ、このルックアップ自体が何らかの会話の存在を証明するものではない。ダーラム氏は、サイバー分野の研究者が連邦政府との契約を通じて、膨大なDNSデータにアクセスできたと主張している。
サスマン被告の仲間は、警戒に値する可能性のある、トランプ氏からロシアへのつながりを見つけたと考えた。そして、それは安全保障上の脅威を探すという政府との契約の範囲内のものだったと述べている。
あるデータセットは、トランプ氏一族が経営するトランプ・オーガニゼーションと、モスクワ最大の民間銀行であるアルファ銀行のつながりを示している可能性があった。別のDNSルックアップは、ロシア製スマートフォンがトランプタワーとホワイトハウスで使われた可能性を示唆していた。ダーラム氏は最近裁判所に提出した書面で、このデータがトランプ氏の在職期間中のものであるとの印象を与えた。現在、この点が激しく争われている。
サスマン被告はデータで何をした?
ダーラム氏は以前、サスマン被告が16年9月にFBI幹部と会い、トランプ氏とアルファ銀行の関係の可能性について情報を渡したと明らかにした。サスマン被告は17年2月に米中央情報局(CIA)当局者とも会った。ダーラム氏は最近裁判所に提出した書面で、ここで話された内容について新たな知見を示した。
ダーラム氏によると、サスマン被告はCIA当局者との会合で「こうした(DNS)ルックアップは、トランプ氏やその仲間が珍しいロシア製のものとみられる無線電話機をホワイトハウス近辺や他の場所で使っていることを証明するものだと主張した」という。
サスマン被告の弁護士は、これはサスマン氏がCIAに伝えた内容とは異なっており、ダーラム氏もそれをわかっていると主張する。また、この会合はトランプ氏就任後に開かれ、選挙運動にダメージを与える試みにはなりようがないとも強調した。
弁護士は裁判所への提出書面で「特別検察官は、(CIAに)提供されたデータがトランプ氏就任以前の期間、つまりバラク・オバマ氏が大統領だった時期に関するものだけだったことを十分認識している」と述べた。