家宅捜索巡るトランプ氏の提訴、地裁判事が詳細な説明命じる 26日までに
(CNN) 米フロリダ州南部の連邦地裁判事はトランプ前大統領に対し26日までの猶予を与え、自らの要請に関して法的に精緻(せいち)な議論をするよう求める考えを示した。トランプ氏は自身の邸宅「マール・ア・ラーゴ」が今月8日に家宅捜索を受けた件で、証拠物の検証を監督する「スペシャルマスター」を選任するよう同裁判所に求めていた。
同判事はトランプ氏の弁護団に向け、同裁判所が今回の件に踏み込めるとする理由に関して詳細に論じるよう命じた。またトランプ氏が具体的に何を要求しているのか、司法省は同氏のスペシャルマスターを巡る申し立てをすでに提示されているのかどうかについて説明を求めた。
さらに当該の要請が、下級判事によって行われている別の検証に何らかの影響を及ぼしかねないことについても考慮に入れるよう求めた。下級判事は、上記の家宅捜索を行うに足る相当な理由を示した連邦捜査局(FBI)の宣誓供述書の一部開示を認めるかどうか検討する手続きを開始している。
地裁判事の命令が多くの点で明示しているのは、トランプ氏による提訴が十分な説明を伴うものではなかったということだ。何を期待してスペシャルマスターの選任を裁判所に求めるのかが明確ではなかった。とりわけ今回のFBIによる家宅捜索のように大きな利害の絡む捜査ではその点を明らかにする必要がある。
一般的に言って、自宅の捜索で押収された証拠の検証についてトランプ氏がスペシャルマスターの介入を求めるのは法的規範に外れる行為ではない。同氏の元弁護士、マイケル・コーエン氏は2018年、自身の事務所と住居をFBIに捜索された際、スペシャルマスターの選任を要求して認められている。
しかしトランプ氏の要求は捜索の2週間後と、司法省が証拠の検証をかなり進めているとみられるタイミングで行われた異例のものだった。
また同氏の訴状の内容は政治的な非難に比重が偏っており、法的な議論が希薄だった。なぜ裁判所の介入が必要なのか、いかなる権限に基づいてそれができるのかといった問題が語られていなかった。
トランプ氏の弁護団は裁判所の規定を引用し、判事にはそうした要求を承認する権限があると主張した。しかし引用は民事訴訟の手続きに関する規定からであり、刑事事件の捜索令状が絡む文脈の中でなぜそうした規定が適用されるべきなのかについてはいかなる説明もなされなかった。
トランプ氏はまた、訴状とは別に暫定的な差し止め命令の申し立てといった要請も提出していなかった。こうした要請があれば、判事はトランプ氏の要求を検討する日程を加速できたとみられる。
一方で訴状は、16年大統領選でのロシアの介入疑惑を巡るFBIの捜査を非難。そのうえで司法省が今回の行動に踏み切った動機について、トランプ氏の24年大統領選への出馬を阻止することが念頭にあったとの見方を示唆した。
米連邦検事事務所で7年にわたりフロリダ州南部を担当した経歴を持つ弁護士のマーク・シュナップ氏は、トランプ氏が22日に提出した訴状について、法的文書というより政治的なメッセージであり「実際のところ何も要求してはいない。狂気の沙汰だ」と指摘した。