米NY州判事、トランプ氏の詐欺の責任認定 一族企業の事業認可取り消し
(CNN) 米ニューヨーク州裁判所の判事は26日、同州司法長官がトランプ前大統領やその家族などを訴えた民事訴訟で、トランプ氏とその成人の息子らが約10年間にわたり虚偽の財務諸表を提供していたとしてトランプ氏らの詐欺の責任を認定し、一族が経営するトランプ・オーガニゼーションの事業認可を取り消した。
同訴訟は数日前、今後公判に入ることが決まっていた。
アーサー・エンゴロン判事は、一部争点に関するジェームズ司法長官からの略式判決の申し立てを認め、「継続的な違反について法律問題として有責」と判断した。トランプ氏らが資金の貸し手や保険会社に約10年間提出した財務諸表が虚偽で、繰り返し詐欺に関与したと認定した。
公判に向けて残る争点については、本訴訟における他の主張を巡る被告らの有責性や、被告らが支払うべき額を決定することになるとも述べた。
今回の判断はトランプ氏に打撃となる。同氏は自身が所有するゴルフコースやホテル、フロリダ州マール・ア・ラーゴやニューヨーク州セブン・スプリングスの自宅の価値を水増ししていないと主張していた。裁判所はそうした主張を一切認めなかった。
ジェームズ氏は「今日、判事は我々を支持する判断を下した」「事件の残りの部分を公判で提示する日を楽しみにしている」との声明を発表した。
ジェームズ氏は2億5000万ドル(約372億円)の損害賠償、トランプ氏らによる州内企業の役員就任の禁止、トランプ・オーガニゼーションの5年間の商取引の停止を求めて訴えていた。
エンゴロン氏はトランプ・オーガニゼーションを含む被告企業の事業認可を取り消し、法人の解散を管理する財産保全管理人が設置されると述べた。訴訟の対象にはウォールストリートにある商業ビルやセブン・スプリングスにある自宅など、州内2カ所の不動産も含まれている。
ただ、今回の判断の対象範囲はまだ明確ではない。また、マール・ア・ラーゴのように州外にある不動産にどのような影響を与えるのか、トランプ氏一族がニューヨークを拠点とする資産を州外の新会社に移転させた場合にどうなるのかなど、不動産の処分の進め方に関する疑問点も残っている。
トランプ氏は今回、自身がニューヨーク市内のトランプタワーに所有する個人区画の価値を3倍に水増しし、1億1400万~2億700万ドルの過大評価をしていたと指摘された。エンゴロン氏は「自分の居住スペースを評価する不動産開発業者が起こした、この規模にまで拡大された不一致は詐欺としか考えられない」と断じた。
エンゴロン氏はさらに「被告の世界では、賃貸借の制限がある区画は制限のない区画と同じ価値があり、制限のある土地は制限のない土地と同じ価値がある。制限はどこかに消えてしまう。相手方に責任を押しつける責任排除の文言は、他方当事者のうそを免除している」とも言及。「それは幻想の世界で現実世界ではない」と述べた。
ジェームズ氏は、トランプ氏やその子ども、企業幹部らが資金の貸し手らをだましていたと指摘。財務諸表上の虚偽の情報を提示することで、銀行から最優遇金利で1億5000万ドルの融資を受けるなど、「大きな」金銭的利益を得ていたと指摘していた。
トランプ氏は証言録取の際、財務諸表には責任排除の文言があるから詐欺的ではないと主張。貸し手などに対して、財務諸表に依拠すべきではないと警告する文言があったと述べていたが、エンゴロン氏はこうした主張を認めなかった。
トランプ氏の弁護士は、今回の判断について「事実と統治法から完全に切り離されたもの」で、影響の範囲は不明確なものの、トランプ氏らは上訴する方針だと述べた。