米統合参謀本部前議長、退任式で「独裁者になりたい者」非難 トランプ氏にあてつけか
(CNN) 米軍制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長の退任式がバイデン大統領らも臨席する中でこのほど開かれ、前議長は「米軍は独裁者になりたいと考えている者」へ誓いを立てないとの異例の表現を交えたあいさつを述べた。
不仲だったとされるトランプ前大統領へのあてつけの言葉と受け止められている。前議長は、2021年のトランプ前政権の退陣時に起きた混乱の中で同氏との関係が悪化してもいた。ミリー氏は18年、トランプ氏の指名で統合参謀本部議長に就任していた。
前議長は退任式で、米軍は世界の軍部の中でも独自性を持ち、「国や仲間、宗教、国王、女王、専制君主や独裁者に誓いを示さない」とし、「独裁者を望む者に対してもだ」と続けた。「誓いの対象は米国の憲法であり、米国の理念である」とし、「これらを守るために我々は死ぬ覚悟がある」と強調した。
ミリー氏の今回の発言内容は、自らの母校でもある米プリンストン大学で昨年開かれた予備役将校訓練課程の会合で示したものと同じだが、統合参謀本部議長としての最後の公の発言の場でもあえて持ち出す格好となった。
ミリー氏とトランプ前大統領との関係は20年の夏以降、軋轢(あつれき)が目立ち始めていた。白人警官による黒人の圧迫死事件に根差す抗議活動が全米に広まるなか、トランプ前大統領が政治宣伝を狙ってか、ワシントンのラファイエット広場近くの教会へ歩いて向かう際に、ミリー氏は制服姿で一時、トランプ氏のそばに並んで同行。
前議長のこの行動はその後、米軍の政治干渉についての非難を招き、公に謝罪したミリー氏の対応が今度はトランプ氏の怒りを買う事態ともなっていた。
また、米大統領選の開票結果の信憑性(しんぴょうせい)を疑問視するトランプ氏支持派は21年1月6日、米連邦議会議事堂を襲う前代未聞の事態を引き起こした。ミリー氏はこの数日後、トランプ氏のとっぴな判断を警戒し、中国側に電話をし、米国内の情勢は安定しており中国に軍事攻撃を仕掛ける意図はないと説明したことが判明してもいた。
トランプ氏は最近、この電話を問題視し、「死刑に相当する反逆罪」とも非難。結果的に米国と中国の間の戦争になっていたかもしれないなどとSNS上でこき下ろしていた。
ミリー氏の後任の統合参謀本部議長には、チャールズ・ブラウン前空軍参謀総長が就任した。