パレスチナ系米国人ら標的のさらし行為、サイト上に実名や写真掲載
ニューヨーク(CNN) 米国の大学に進学するまで、フアド・アブヒジレさん(25)はパレスチナ支持が誤りとされる世界のことを知らなかった。
アブヒジレさんは1948年の第1次中東戦争で難民となったパレスチナ人の子孫。この戦争ではイスラエル建国に伴い、およそ70万人のパレスチナ人が故国を追われた。アブヒジレさんの一家は最終的に隣国ヨルダンに移り住み、アブヒジレさんは他のパレスチナ難民の子どもたちと一緒にそこで育った。
ところが米ノースカロライナ大学に進学したアブヒジレさんは、反イスラエルまたは反ユダヤとみなされた人物をブラックリストに載せる匿名サイトに、自分の名が掲載されていることを知った。実名を使わないよう求めたにもかかわらず、ニュース記事に名前を出されたことがきっかけだった。同サイトには学生などの実名が無断で掲載されている。
アブヒジレさんは医学校に出願する際も常に不安を感じ、それ以降は同サイトのために尋問されたり国境でトラブルに巻き込まれたりすることを恐れてヨルダン川西岸を訪れていない。
実名をさらされた被害者はアブヒジレさんにとどまらない。米ハーバード大学のキャンパス周辺では11日、イスラエルのみを非難する内容の声明に署名した学生の氏名と写真をさらす宣伝トラックが走行した。
さらし行為は今に始まったことではないという。パレスチナ系の人権活動家は、占領下にあるパレスチナ人の公平な扱いを訴えたために、あるいは単純にパレスチナ系というだけで、職を失うことを恐れ、精神的な傷を負ってきたとCNNに語った。
問題のサイトには、アブヒジレさんが自分でインターネットに掲載したものではない写真と経歴、さらにはフェイスブックで使っている名前まで掲載されていた。このページの情報は、まるで何者かが常に見張っているかのように、更新され続けていた。
「ショックだった」とアブヒジレさんは振り返る。「自分についてこれほど多くの情報が、憎悪と偽情報に満ちたウェブサイトに掲載されているのを見て、真っ暗な気持ちになった」
「さらし行為やブラックリストは長年にわたってパレスチナ支持者の政治表現を抑圧し、パレスチナ人の組織化や擁護活動にかかわる危険性を高めることを狙った親イスラエル団体の戦術だった」。パレスチナ支持の人権活動家を法的に支援している団体のディラン・サバ弁護士はそう語り、「殺人の脅迫を受けたり、個人的に脅されたり、雇用に関して実際にマイナスになった人もいる」と指摘した。
ニューヨーク市立大学ロースクールに在籍するレナ・グラマさんも、SNSは非公開でプロフィル写真も掲載していなかったにもかかわらず、同じサイトに写真や投稿内容を掲載された。
「私が出かけた抗議デモまで掲載された。私はそれほど頻繁に抗議デモには行っていないのに。昨年1回行っただけで彼らは私を見つけ、私の行動の正確なタイムスタンプまで掲載した」とグラマさんは言う。
学部生時代にパレスチナ人の公正な扱いを求める学生団体を率いていたグラマさんは、パレスチナ支持活動は全て記録されていたと話す。ただし「それは私が誇れないことでも、恥ずかしく思うことでもない」と胸を張った。
グラマさんはユダヤ系の血筋をもつイエメン系米国人のイスラム教徒。さまざまな背景の住民が暮らすニューヨーク市ブルックリン区で育った。ユダヤ系住民との関係について「私たちは互いに共存している」と言い、「これは人道問題にほかならず、私には声を上げる責任がある」と話している。