米共和党の第4回候補者討論会、5つのポイント

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4人に絞り込まれた共和党の候補者たちが、4回目の討論会で論戦を繰り広げた/Justin Sullivan/Getty Images North America/Getty Images

4人に絞り込まれた共和党の候補者たちが、4回目の討論会で論戦を繰り広げた/Justin Sullivan/Getty Images North America/Getty Images

(CNN) 2024年米大統領選で共和党からの指名を目指す候補者が6日夜、アラバマ州タスカルーサで4度目となる討論会に臨んだ。

壇上に上がった候補者はニッキ・ヘイリー前サウスカロライナ州知事、フロリダ州のロン・デサンティス知事、クリス・クリスティー前ニュージャージー州知事、 起業家のビベック・ラマスワミ氏の4人。2時間の討論時間の大半を互いの非難に費やした。

候補者選びの初戦となるアイオワ州の党員集会が6週間後に迫る中、候補者らは自らの政治信条を披瀝(ひれき)し、主要な相違点を探ることができた。印象に残る個人攻撃の応酬も繰り広げられた。

4人に絞り込まれた共和党の候補者たちが、4回目の討論会で論戦を繰り広げた/Justin Sullivan/Getty Images North America/Getty Images
4人に絞り込まれた共和党の候補者たちが、4回目の討論会で論戦を繰り広げた/Justin Sullivan/Getty Images North America/Getty Images

ラマスワミ氏がヘイリー氏を「口紅を塗ったディック・チェイニー」と評すれば、クリスティー氏はラマスワミ氏を「知ったかぶり」と揶揄(やゆ)。デサンティス氏はヘイリー氏について、「左派に追及されると必ず屈服する」と指摘した。

ヘイリー氏はこれに対し「注目されるのは最高」と反撃した。

世論調査の支持率で優位に立つトランプ前大統領は、今回の討論会も欠席。壇上の候補者が各自同氏を攻撃する場面も見られたが、討論の大部分は候補者同士のぶつかり合いが占めた。

以下、4回目の討論会で見えてきたポイントを5点挙げる。

デサンティス氏とラマスワミ氏がヘイリー氏に対峙

討論開始から1時間のうちのほとんどは、ヘイリー氏に注目が集まった。デサンティス氏は、トランスジェンダーの人々に対して男女どちらのトイレの使用を認めるべきかという議論にヘイリー氏を引きずり込んだ。ラマスワミ氏は前回に続き、ヘイリー氏が米航空機大手ボーイングの取締役だったことに言及した。ヘイリー氏がかつて知事を務めた州には、同社の大規模な製造工場がある。

複数回にわたり、デサンティス氏とラマスワミ氏はチームを組んでヘイリー氏に対する批判を展開。ビジネス向けSNSのリンクトインの共同創設者、リード・ホフマン氏や、資産運用大手ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)らから資金協力を受けていると指摘した。元来民主党への寄付で知られる前者は、ヘイリー氏を支援する特別政治活動委員会(スーパーPAC)に25万ドル(約3600万円)を寄付している。

討論の後半、ラマスワミ氏が掲げたメモ帳には、ヘイリー氏と汚職を結びつける主旨の文言が書き込まれていた。

最近保守系団体からの支持も取り付けたヘイリー氏は、出所がどこであれ自身に寄せられる助力は歓迎するとしつつ、それによって自らの政策が左右されることはないと強調した。また他の候補者たちも、同様の寄付の申し出があれば受け入れるはずだとの見解を示した。

「彼らは嫉妬しているだけ」「自分たちだって、そうした人々からの支援を望んでいる」(ヘイリー氏)

クリスティー氏はリズムを取り戻す

16年大統領選に向けて開かれた討論会で存在感を見せつけたクリスティー氏には、当時の力強さが戻ってきた。論敵たちを未熟で不快な、大統領職に就く準備ができていない人物として描写してみせた。本人の指名獲得にはつながらないかもしれないが、他の候補者たち、とりわけデサンティス氏とラマスワミ氏にとっては一筋縄ではいかない状況を作り出した。

デサンティス氏については、基本的な質問に答える気がない印象を植え付けようとした。同氏に対し、もし自分が大統領だったなら現在のパレスチナ自治区ガザ地区に米軍を派遣し、イスラム組織ハマスに拘束された米国人の人質を救出するかとの質問が飛ぶと、そこへクリスティー氏が割り込んだ。

同氏はデサンティス氏に向け、「米国の大統領であれば、そうした質問に答えるかどうかを選ぶことはできない」と告げた。

この後の議論で、トランプ氏が大統領職に適任だと思うかと問われたデサンティス氏が明確な回答を避けると、そこでもクリスティー氏が攻撃。

「(デサンティス氏は)答えるのが怖いか、質問を聞いていないかのどちらかだ。こんな質問に答えるのはわけない」「私は単純な男だ。質問を聞けば、それに答える」と強調した。

一方、ラマスワミ氏に対しては、ウクライナとロシアの和平合意を巡る同氏の提案を批判しつつ、選挙運動中と討論会で発言内容が違うと非難。知識を自慢する態度も非常に不快だと指摘した。

「名前を言ってはいけないあの人」

クリスティー氏はさらに、他の3人の候補者がトランプ氏に直接言及するのを避けているとも示唆。その理由は自分たちがトランプ氏の副大統領になるチャンスを失いたくないから、もしくは28年の大統領選に向けた展望を描いているからだと述べた。

その上でトランプ氏の存在を、「ハリー・ポッター」シリーズに登場する「名前を言ってはいけない」悪役ヴォルデモートになぞらえた。

討論が進むにつれて、他の候補者らは限定的ながらトランプ氏への批判を口にした。ヘイリー氏は、トランプ氏の対中政策には厳しさが足りなかったと主張。デサンティス氏はトランプ氏が16年大統領選で掲げた公約を守らず、南部国境の壁の建設費をメキシコに支払わせていないと述べた。

とはいえトランプ氏に対し、終始反対の立場を表明し続けたのはクリスティー氏だけだった。同氏は討論を締めくくる発言でトランプ氏について、重罪で有罪になるため24年大統領選への立候補は認められなくなるだろうと述べた。

この発言には会場からブーイングが起こったが、クリスティー氏は「好きなだけブーイングすればいい。そうやって現実を否定し続ければいい。だが党として現実を否定するなら、我々はさらに4年間、ジョー・バイデンを受け入れなくてはならなくなる」と警告した。

文化戦争に突入

デサンティス氏による「ウォークとの戦争」は、過去3回の討論会で主要な議題に上ることがなかった。「ウォーク(目覚めた)」とは社会的不公正、人種差別、性差別などに対して意識が高いことを指す。

ところが今回、同氏は国内で文化戦争を引き起こしている2つの問題を持ち出し、ヘイリー氏を穏健派と印象付ける一助にしようとした。具体的には環境、社会、ガバナンスの課題に取り組む企業に投資する「ESG投資」と、トランスジェンダーの権利だ。

デサンティス氏は18歳未満に対するジェンダー・アファーミング・ケア(性自認を尊重する医療) を巡り、ヘイリー氏の姿勢を批判。自身はフロリダ州でそうしたケアを禁止する法案に取り組んでいるが、ヘイリー氏はこれに反対していると主張した。

ヘイリー氏はかねてジェンダー・アファーミング・ケアについて、法律ではなく当事者の子どもの両親が主導するべき問題だとの見解を表明している。

その後デサンティス氏はラマスワミ氏と共に、ヘイリー氏に対する富裕層からの支援に言及。それらの支援はESG投資の運動と関連したものだと主張した。

「彼らは経済力にものを言わせ、左翼の課題をこの国に押し付けたがっている」(デサンティス氏)

ラマスワミ氏が解き放つ陰謀論の数々

これが自身にとって最後になるかもしれない共和党候補者討論会の舞台で、ラマスワミ氏はこれ以上なく明確なメッセージを発信した。それは極端な陰謀論を提唱する共和党の一派に向けられたものだった。

数多くの誤った、挑発的な陰謀論を解き放ちつつ、同氏は自分こそがそれらを受け入れることのできる唯一の候補者だとアピールした。

そうした陰謀論に基づき、ラマスワミ氏はトランプ支持者が起こした21年1月6日の連邦議会議事堂襲撃事件を「内部の者による犯行」と呼んだ。20年大統領選は、「ビッグテック(巨大IT企業群)に盗まれた」と主張。政府は9・11米同時多発テロへのサウジアラビアの関与について、「20年間うそをついている」とも述べた。

また「グレート・リプレースメント」理論は右翼の陰謀論などではなく、民主党の綱領の基盤として表明されていると訴えた。これは人種差別的な陰謀論で、非白人を西洋諸国に送り込み、白人の有権者に取って代わらせることで政治的課題を達成する計画が存在すると説く内容。

ラマスワミ氏によれば、米国にとっての最大の脅威は「ディープステート(影の政府)」であり、「少なくともドナルド・トランプはそれと戦おうとしていた」という。

さらに討論を締めくくる言葉では、「気候変動の課題はでっち上げだ」と主張した。

「新型コロナウイルスが悪かったと思うなら、この気候にまつわる課題の方が格段に悪い。この新たな宗教に膝(ひざ)を屈してはならない」「つまりそういうことだ。これは現代宗教の代用品に他ならない。我々は自らに鞭(むち)を当て、現代の生活様式を失っている。気候という新たな神に屈服することで。だが私が目を光らせていれば、そんな状況もいずれ終わりを迎えるだろう」(ラマスワミ氏)

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