ANALYSIS

バイデン氏、現職なのに支持率でリード許す 米大統領選

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米国のバイデン大統領

米国のバイデン大統領

(CNN) 筆者も含め、選挙アナリストは石橋をたたいて渡りたくなるものだ。「おそらく」「かもしれない」といった物言いをして、先を読みすぎないよう気をつけている。ジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏の一騎打ちが予想される2024年大統領選の世論調査を検証するとなれば、なおさらだ。

だが実際のところ、今現在トランプ氏は僅差(きんさ)ながらも確実にバイデン氏をリードしている。2期目をかけた選挙戦のこの時点で対立候補に後れを取っている現職大統領は、統計が始まって以来バイデン氏が2人目だ。

最近の全米世論調査を見てみよう。CBSニュースとユーガブ、CNNとSSRS、FOXニュース、マーケット大学ロースクール、クイニピアック大学の五つの世論調査はいずれもCNNの報道基準を満たす質の高い世論調査だ。

登録有権者または投票が予想される有権者からの支持率を見てみると、五つの世論調査ではいずれもトランプ氏が2~4ポイントでバイデン氏をリードしている。この数字自体はあまり意味がない。これら世論調査でのトランプ氏のリードはいずれも誤差の範囲内だからだ。ただし平均値で見ると、現職大統領が現実的な問題を抱えている姿が浮かび上がる。

過去80年間、現職大統領は決戦投票を約1年後に控えた時点で、10ポイントをわずかに上回る差で対立候補をリードしている。このことは1943年のフランクリン・ルーズベルト大統領以来、ほぼすべての現職大統領の世論調査に当てはまる。

2011年11月のバラク・オバマ氏対ミット・ロムニー氏の場合も同様だ。これは特筆すべき点だ。大勢の民主党支持者がオバマ氏も同じ時期にリードされていたことを理由に、バイデン氏苦戦を示す世論調査のデータを一蹴しようとしているが、これは単に間違っている。

事実、同じ時期に世論調査で対立候補にリードされていた現職大統領はただ1人、バイデン氏の前任者で、再び相まみえることになりそうな人物、すなわちトランプ氏だけだ。19年11月の段階で、トランプ氏はバイデン氏に10ポイント近く水をあけられていた。

これをふまえると、世論調査でのトランプ氏のわずかなリードも大きな意味を持ってくる。20年の大統領選期間中、トランプ氏がこれほどリードを稼いだことは一度もなかった。20年のこの時期だけではなく、どの時期でもだ。世論調査の平均値だけでなく、20年の選挙期間を通じて、CNNの報道基準を満たしたすべての全米世論調査に共通していえることだ。

今度の大統領選では、すでに17の世論調査でトランプ氏がバイデン氏よりも高い得票を得ている。

これは激戦州でも同じだ。トランプ氏は少なくとも一つの世論調査で、20年の選挙期間中に一度もリードすることができなかった州でバイデン氏を抑えている。具体的にはミシガン州、ネバダ州、ペンシルベニア州などで、これらの州が次期大統領を決めるカギを握ることになるだろう。

バイデン氏に何が起きたのか

当然ながら疑問が生じる。バイデン氏は前回勝利した人物を相手に、なぜこれほど苦戦しているのか。

民主党員の間で意見が割れているせいだと考えたくもなるだろう。とくにバイデン氏は民主党左派と問題を抱えている。イスラエルとイスラム組織ハマスの紛争での対応に大きな批判の声が上がっていることがそれを物語っている。

だが数字からはそういった状況は読み取れない。クイニピアック大学による最新の世論調査を例に挙げると、超リベラル派の支持率はバイデン氏が96%、トランプ氏が2%と大きくリードしている。マーケット大学の世論調査でも、同じ有権者層での支持率はバイデン氏が95%とトランプ氏の5%を大きく上回る。

しいて言うなら、バイデン氏は20年の選挙戦当時よりも健闘している。ピュー・リサーチ・センターが有効有権者を対象に行った調査によると、バイデン氏の当時の支持率は92%で、トランプ氏は6%だった。

実際のところ、バイデン氏が大きく落ち込んだ要因は中道派にある。クイニピアック大学の調査では、中道派の支持率でバイデン氏のリードはわずか12ポイント。マーケット大学の世論調査でも18ポイント。FOXニュースで5ポイント、CNNでは17ポイントとなっている。

ピュー・リサーチ・センターの20年の調査では、同じ有権者層の支持率でバイデン氏は28ポイントもリードしていた。出口調査でも、中道派の30%がバイデン氏に票を投じた。おしなべて言えば、バイデン氏は約15ポイントのリードを失ったことになる。

実際問題、有権者のバイデン氏離れをイデオロギーで説明するのは間違っているのかもしれない。

経済が原因ともとれる。バイデン氏がトランプ氏にリードを許しているのが経済問題だ。だが20年の選挙戦終盤でも、有権者は経済問題でバイデン氏よりもトランプ氏を支持していた。

バイデン氏の苦境を説明する上で筆者が思いつく一番の理由は、おそらく年齢だ。バイデン氏は大統領を務めるのに高齢過ぎるかという質問は、他のどの質問よりも回答が20年から大きく変化している。

米紙ニューヨーク・タイムズとシエナ大学が今月発表した世論調査を見てみよう。前回の大統領選でバイデン氏が接戦の末に勝利したジョージア州、アリゾナ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州、ネバダ州、ミシガン州の6州を対象にしたものだが、バイデン氏は大統領職をきちんと務めるには歳が行き過ぎていると回答した登録有権者はなんと71%に上る。クロス集計で列挙されたどの年齢層も大多数が同じ回答だった。民主党支持者の51%も同じように回答している。

20年当時の数字は約半分、つまりバイデン氏が大統領を務めるには高齢すぎると回答した登録有権者は36%だった。

これほど多くの有権者がバイデン氏を高齢だと感じているのもうなずける。なにしろバイデン氏は歴代最年長の大統領なのだ。

仮にバイデン氏が対立候補も同じように高齢だと有権者を説得できれば、選挙戦を勝利に導けるかもしれない。結局のところ、トランプ氏も当選すれば最年長記録を更新することになるのだから。

だがバイデン氏にとって頭が痛いことに、トランプ氏が高齢だと感じている有権者はたったの39%だ。

バイデン氏がこの数字を上げることができれば、世論調査の流れが変わってもおかしくない。だができなければ、トランプ氏が、グローバー・クリーブランド大統領以来2人目の、期をまたいで再選を果たす大統領になるかもしれない。

本稿はCNNのハリー・エンテン記者による分析記事です。

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