2024年米大統領選、デサンティス氏とヘイリー氏の対話集会でわかったこと
(CNN) 2024年の米大統領選で共和党からの指名を目指しているロン・デサンティス・フロリダ州知事とニッキー・ヘイリー前サウスカロライナ州知事が4日夜、CNN主催の市民との対話集会に参加した。アイオワ州の党員集会が1週間半後に迫る中、両氏は有権者に対する説得を試み、まだトランプ前大統領が勝利すると決まったわけではないと強調。自分たちが当選する可能性もあることを証明しようとした。
デサンティス、ヘイリー両氏とも、アイオワ州の共和党の有権者に対し、トランプ氏が党の指名を獲得すれば、共和党は11月の本選で再び敗れると警告した。
またトランプ氏の法廷闘争が現職のバイデン大統領を打倒する共和党の取り組みに悪影響を及ぼす恐れがあるとも指摘した。
以下、対話集会で分かった6つのポイントを挙げる。
期待値を設定する両候補者
対話集会で質問に答えるロン・デサンティス氏(左)とニッキー・ヘイリー氏/Rebecca Wright/CNN
世論調査によればアイオワ州での支持率はトランプ氏が明らかにリードしているものの、デサンティス、ヘイリー両氏共に最後の瞬間まで同州での勝利を目指して戦うと強調。デサンティス氏は、メディアや評論家の意見で決めるのではなく、自分が合衆国大統領に最もふさわしいと思う人物に投票してほしいと有権者に呼びかけた。その上で、自身はアイオワ州の99郡全てを周っていると訴えた。
ヘイリー氏の場合、党指名獲得の望みはどちらかと言えば今月23日に行われるニューハンプシャー州予備選の結果の方にかかっているというのが幅広い見立てだ。それでも本人はアイオワ州での勝利をあきらめておらず、有権者に向けて最後まで戦うとアピール。現在も、1つの州だけでなく全ての州で戦っていると強調した。
2人でトランプ氏を批判
昨年12月16日、ニューハンプシャー州ダラムでの選挙集会で聴衆に挨拶するトランプ氏/Reba Saldanha/AP
デサンティス氏とヘイリー氏はどちらもトランプ氏について、大統領選で3度続けて党指名の候補者とするのはリスクがあり、共和党の有権者はこれを避けるべきだと主張した。
両氏ともトランプ氏が抱える訴訟の詳細を巡る批判はしないよう注意を払いつつ、大統領選の候補者としてのトランプ氏は本人の言動などから共和党を破滅に導く存在だと強調した。
ヘイリー氏は「トランプ氏の行くところに混沌(こんとん)が付いて回る。我々は国の秩序を乱すわけにいかないし、世界を混乱に陥れるわけにもいかない。この上混沌の4年間を過ごすことは不可能だ。もう生き残れないだろう」と訴えた。
デサンティス氏はしばしばトランプ氏の訴訟について嘆き、訴訟でトランプ氏の政治的立場はかえって強化されていると指摘した。訴訟により共和党の支持基盤が結集するというのがその理由で、これらの支持者は当該の司法上の手続きを政治的動機に基づくものだと見なしているという。
それでもデサンティス氏はアイオワ州の有権者に対し、トランプ氏が今年直面するとみられる裁判によって、バイデン氏との対決で不利な状況に立たされる恐れがあると警鐘を鳴らした。
デサンティス氏の進化
対話集会はアイオワ州デモインのグランド・ビュー大学で開催された/Rebecca Wright/CNN
4日夜の対話集会に登場したデサンティス氏は、これまでと違っていた。トランスジェンダーに対する医療行為の禁止や人工妊娠中絶といった自身の得意な社会的問題に直ちに踏み込むことをせず、自分が立候補する意義について語った。
デサンティス氏によれば、トランプ氏は自分にとってのみ重要な問題を争点として出馬している。ヘイリー氏の立候補は、自分への寄付者を念頭に置いたものだ。これに対しデサンティス氏自身は、平均的な有権者のために立候補しているという。
この夜のデサンティス氏は、最も活発に行動する部類の共和党支持層だけでなく、より広範囲の聴衆に訴えかけることを目指していた。それは過剰に堅苦しく、親しみが持てないと酷評されていた過去の同氏からの明確な変化だった。
銃乱射事件発生の日に銃問題を討論
4日の朝には同州ダラス郡の高校で銃乱射事件が発生し、少なくとも1人が死亡、5人が負傷した。銃撃に関連して、デサンティス氏には銃にまつわる権利の制限なしにどのようにして学校における銃暴力の問題に対処するのかとの質問が飛んだ。
デサンティス氏は前任のフロリダ州知事、リック・スコット氏の下で成立した銃改革に言及した。この数週間前の18年2月、同州パークランドの高校で起きた銃乱射事件では17人が殺害されていた。
米アイオワ州の高校での銃乱射事件を受け、追悼の集会に参加する地元住民/Charlie Neibergall/AP
ここまで学校駐在警官の配備や、真に問題行動を露呈する生徒の特定の支援などあらゆる施策を講じてきたとデサンティス氏は説明。今回のアイオワ州の高校で起きた事件については現在情報を集めているが、容疑者の生徒は極めて深刻な問題を抱えていたようだとの見解を示した。
フロリダ州は18年3月に可決した州法で、銃購入の最低年齢を18歳から21歳に引き上げ、購入までの待機期間を3日に増やした。同州のある上院議員はこの待機期間の廃止を支持しているが、自身の立場を問われたデサンティス氏は、待機期間を義務づけるのではなく即時の素行調査を行うことで対応できるとの考えを示した。
ヘイリー氏の回答も、メンタルヘルスと警備に焦点を当てる内容だった。
同氏によれば米国には十分な数のメンタルヘルス療法士がおらず、治療を行うセンターも足りていない。治療が保険でカバーされないこともあるという。一方で同氏は、学校の警備を空港や裁判所並みに厳重にするよう求めた。
何らかの銃規制を支持するかと問われると、自身は銃携帯許可証の保持者だとした上で、人々の自衛能力を制限する措置は支持しないと述べた。
ヘイリー氏、南北戦争に関する質問の答えを再考
ヘイリー氏の発言に耳を傾ける聴衆/Rebecca Wright/CNN
ヘイリー氏は先週、南北戦争の原因について問われた際、奴隷制に言及することができなかった。共和党のライバルの一人、クリス・クリスティー前ニュージャージー州知事は、ヘイリー氏が奴隷制に言及しなかったのは人々の気分を害するのを恐れたからだと示唆した。
自身のコメントに対する反応について質問され、ヘイリー氏は再度、それが既知の事実だと思っていたと説明。即座に奴隷制に言及するべきだったが、サウスカロライナ州で育った自分は早くから奴隷制について学んでおり、質問を受けた際には奴隷制のことを考えつつも、口にしていたのは我々が今後学ぶであろう教訓に関する内容だったと振り返った。
過去のインタビューや回顧録で、ヘイリー氏は自身と両親がサウスカロライナ州の農村部に移り住んで以降経験した人種差別にまつわる出来事について語っている。両親はインドからの移民だ。
また州知事時代の2つの重要な事件と、その後の対応にも触れた。警官が黒人男性を射殺した事件の後には、警官にボディーカメラの使用を義務づける州法に署名。また白人至上主義者が黒人教会で銃乱射事件を起こした後には、州議会議事堂の敷地から南北戦争時代の南部連合旗を撤去するよう求めたとした。
デサンティス氏、人工妊娠中絶に関する論調は軟化
人工妊娠中絶に反対する立場は維持しつつ、デサンティス氏は中絶禁止の規則を施行する政府の役割を論じる際、より柔らかい口調を心がけた。また妊娠6週後の中絶禁止を規定した州法を巡り、例外措置を認められるために女性が被る負担について問われた時にも、曖昧(あいまい)な返答を述べるにとどめた。
とはいえ、同氏の回答は本選の選挙運動で自身に不利になる形で使われる公算が大きい(ヘイリー氏は自身の立ち位置を格段に長い期間公言しており、今回はそれに関する質問を受けなかった)。中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を最高裁が覆し、その後多くの州で中絶を非合法化する動きが起こったが、こうした状況に対しては従来の党派の分裂を超えて大きな不満の声が上がっている。
デサンティス氏はより多くの時間を費やして、右派の側からトランプ氏を攻撃。トランプ氏が本当に中絶に反対しているとは思わないと発言した。
「中絶反対を掲げるアイオワ州の有権者を念頭にドナルド・トランプが現在取っている姿勢は、初めて大統領選に出馬した時に信条だと公言していたものから相当に異なっている」(デサンティス氏)