米シークレットサービス長官、トランプ氏暗殺未遂巡り下院で証言 批判浴びるも辞任要請は拒否
(CNN) 米シークレットサービス(大統領警護隊)のチートル長官は22日、下院監視委員会で証言し、 トランプ前大統領に対する暗殺未遂事件につながった衝撃的な警備上の失敗を巡り、共和、民主両党の議員から厳しい批判を浴びた。
チートル氏は、今月13日にペンシルベニア州バトラーで開催されたトランプ氏の選挙集会で「重大な」問題が複数存在したことを認めた。集会中、トランプ氏は右耳を撃たれて負傷していた。
チートル氏によれば、トランプ氏が壇上に立つ前にシークレットサービスは「2~5回にわたり」不審な人物が周辺地域にいることを認識していたという。
委員会の議員らは警備の破綻(はたん)に関する新たな情報と再発防止策について引き出そうと試みたものの、チートル氏は何度も返答を拒み、現在連邦捜査局(FBI)による捜査が行われている最中だと指摘した。
また即座の辞任を求める両党の議員からの要求にも応じることはなかった。
チートル氏はトランプ氏暗殺未遂事件が「過去数十年で最も重大なシークレットサービスによる作戦上の失敗」だったことをすぐに認めた。具体的には1981年に発生したレーガン大統領を狙った暗殺未遂事件以降で最悪の事態だったと述べた。
しかし、自身の管轄下で起きた歴史的な失態にもかかわらず、辞任は断固として拒んだ。
レーガン大統領暗殺未遂事件当時のシークレットサービスの長官は事件から8カ月後に辞任したが、チートル氏は「私は自分こそが現時点でシークレットサービスを率いるのに最良の人物だと思う」と主張した。
銃撃前のトランプ氏には本人の要望通りの警備態勢が敷かれていたのかどうか問われると、チートル氏は13日の集会に関してはそうであり、いかなる要望も拒否していないと答えた。
CNNはこれより前、シークレットサービスの報道官の声明を報道。それによると過去には特定のリソースを提供しないことがあったものの、いくつかの事例では代わりとなる他の治安対策を地元の法執行機関から提供してきたという。
この他、監視委員会の委員らは、トーマス・クルックス容疑者がトランプ氏に向かって発砲した屋根の上にシークレットサービスの隊員がいたのかどうか、集会前に同容疑者がドローン(無人機)を周辺地域上空に飛ばしていたのかどうか、ライフルを持って屋上にいる容疑者の目撃情報があったのになぜ銃撃を阻止できなかったのかといった質問を浴びせた。
チートル氏はこれらの質問に直接は答えなかった。ドローンについてはFBIから報告を受けたことを確認したが、依然として調査中の事案だと説明。「まだ捜査が行われている最中だ」との発言を数回繰り返した。
共和党のジェームズ・コマー下院議員は、チートル氏に対して直接「我々はFBIがこの捜査を主導しているのかどうか、彼ら主導の捜査が信用できるのかどうか、確信を得る必要がある」と告げた。「なぜならここにいる我々の中には、FBIをあまり信頼していない議員もいるからだ」
質問に明確に答えないチートル氏に対しては、複数の委員から不満を表明する声が上がった。
現場周辺での不審人物の存在を「2~5回」認識していながらトランプ氏を登壇させた明確な意思疎通の破綻や、容疑者の目撃情報があったにもかかわらず直後に発砲を許したことについては、現在シークレットサービスで検証中だとチートル氏は述べた。
同氏の説明によれば、不審な行動と脅威との間には区別があり、容疑者に関する当初の報告では不審な行動は認められたものの脅威の存在を特定するには至っていなかったという。
容疑者を脅威と認識したのは具体的にいつかと問われたチートル氏は、容疑者がトランプ氏に向かって発砲する数秒前だと答えた。
右派メディアや議員の一部からは、シークレットサービスの今回の失態について、女性隊員に責任の一端があるとの声も上がっている。
この件に関して共和党のある委員は、隊員の構成を変更するチートル氏の取り組みが男性隊員比率の極端な高さに起因するものなのかどうか質問。これに対し同氏は、自分が採用するのは「最も優秀で有能な人材」だけだと強調した。