トランプ氏暗殺未遂事件、州警察トップが詳細明かす 連邦議会で証言
(CNN) 米ペンシルベニア州警察のクリストファー・パリス本部長は23日、連邦議会下院の国土安全保障委員会の公聴会に出席し、同州の選挙集会で起きたトランプ前大統領に対する暗殺未遂事件について証言した。事件当時は警備上の不手際が複数起きており、シークレットサービス(大統領警護隊)に対する疑問の声が一段と高まる状況となっている。
前日にはシークレットサービスのチートル長官が下院監視委員会で証言したが、事件に関する問いに答えることはほとんどなかった。同長官はその後、警備の不備の責任をとって辞表を提出した。
パリス本部長は公聴会で、シークレットサービスと地元警察による事件当時のやり取りについて説明。後者はトランプ氏を銃撃したトーマス・マシュー・クルックス容疑者を現場で最初に発見していた。
また警官が容疑者を見つけてからトランプ氏への銃撃が行われるまでの時系列も詳細に語った。
警官は持ち場を離れ容疑者を捜索
パリス氏によると、当時現場に配備されていた警官2人は見張りのための持ち場を離れたため、クルックス容疑者がトランプ氏を狙うのに使用した建物の屋根を監視することができていなかった。
この警官らが所属するバトラー郡の緊急サービス部隊は、狙撃能力を有する戦術部隊。彼らは最初に発見した不審人物を探すため持ち場を後にし、他の警官にも注意を促していた。この不審人物がクルックス容疑者だった。
警官らが持ち場に残っていれば、クルックス容疑者が屋根に上るのを確認できていたかという議員の問いに対し、パリス氏は分からないと答えた。
容疑者が撃ったのは8発
クルックス容疑者は8発の弾丸を撃った後、狙撃手に射殺されたと捜査員はみている。パリス氏が明らかにした。薬莢(やっきょう)8個は既に回収済みだという。
当初、容疑者が複数回撃ったことは確認されていたものの、正確な数は明かされていなかった。
パリス氏はこの他、「シークレットサービスの隊員数人」が州警察の現場責任者に対し、郡の緊急サービス部隊がクルックス容疑者の使用した建物の警備を担当していることを告げていたと説明した。この連絡は、集会前の実地検証中に行われていた。
屋根の上での数分間
クルックス容疑者が屋根の上にいる数分の間に、地元警官1人が同容疑者と対峙(たいじ)していたとパリス氏は証言した。
屋根の上に容疑者がいるのを知った警官がもう一人の手を借りて上ろうとしたものの、屋根に「ぶら下がった状態」の時にクルックス容疑者がライフルで狙いをつけたため、この警官は地面に下りざるを得なかったという。
クルックス容疑者がトランプ氏に向かって発砲したのは、警官を退けてから数秒後だった。容疑者が屋根の上にいたのはだいたい3分だとパリス氏は説明した。
同氏によると、この時の警官と容疑者の対峙について、集会場にいるシークレットサービスや他の警官への伝達が行われたのかどうかは「現在も調査中」だという。
シークレットサービスと地元警察のやり取り
クルックス容疑者を巡っては、法執行機関の間でトランプ氏の登壇前からやり取りが行われていた。
パリス氏によれば、クルックス容疑者を最初に発見し、不審人物と報告した上記の緊急サービス部隊の隊員は、同容疑者が距離計を使用しているのを確認。通話やテキストメッセージで州警察に脅威を報告していた。その内容はシークレットサービスにも伝達されたとしている。
集会会場には地元自治体や州、連邦政府の法執行機関が使用する共同の指揮所が設けられており、警備に当たっていた。
パリス氏によると、州警察は容疑者に関するメッセージの内容を口頭でシークレットサービスに伝えたという。