ホワイトハウスがタッカー・カールソン氏のインタビュー番組を非難　「ナチスのプロパガンダ」

ニューヨーク（ＣＮＮ） 右派のコメンテーターとして知られるタッカー・カールソン氏の番組に今週ゲスト出演した人物が、ナチスによるホロコースト（ユダヤ人大虐殺）について、偶然起きた事象だとの見解を示唆した。米国のバイデン政権はこのインタビューを「不快であり、全ての米国人に対する嗜虐（しぎゃく）的な侮辱」と非難している。

カールソン氏は、ゲストで登場したポッドキャスト配信者のダリル・クーパー氏を「恐らくは米国で最高にして最も誠実、かつ人気のある歴史家」と紹介した。２時間のインタビューの中でクーパー氏は、ナチスのホロコーストが意図せざる結果だったと主張。ある種の計画の不備によって起きたのであり、実際にそうだったと言われているような系統的な絶滅政策ではなかったとの認識を示した。

また当時のチャーチル英首相については、「第２次世界大戦の首謀者」とし、「戦争が拡大し、単なるポーランドへの侵攻とは別物になったことへの一義的な責任がある」と指弾した。

カールソン氏がクーパー氏を出演させたことを巡り、この数日で広く批判の声が上がった。こうした動きには過去にカールソン氏を擁護していた一部の右派の人物らも加わっている。

米実業家のイーロン・マスク氏は自身の運営するソーシャルメディアのＸ（旧ツイッター）で当該のインタビューを「非常に興味深い。視聴する価値あり」と推奨したが、後に投稿を削除した。

ホワイトハウスも５日、この問題に言及。ＣＮＮと共有した声明で、アンドルー・ベイツ報道官は「ナチスのプロパガンダを広めるホロコースト否定論者にマイクを渡すことは、全ての米国人及びアドルフ・ヒトラーに集団殺害された６００万人以上のユダヤ人の記憶に対する不快かつ嗜虐的な侮辱だ。ナチスを倒すために戦った数百万人の米国人の奉仕、反ユダヤ主義の全ての犠牲者を侮辱するものでもある」と述べた。

チャーチルが第２次大戦の「首謀者」という主張にも異議を唱え、「ヒトラーこそ人類史上最も邪悪な人物の一人であり、第２次大戦の首謀者」と強調した。

カールソン氏にコメントを求めたところ、ＣＮＮ宛てにテキストメッセージが届いた。

同氏はそこでホワイトハウスを厳しく批判。「この正気を失った人々がチャーチルの神話を利用するおかげで、我が国は歴史上類を見ないほど核戦争に近づいている。その事実にうんざりするし、全ての米国人はこれを恐れるべきだ」「彼らは戦争好きの変人。道徳的高みに立つ気がない」と非難した。

ただ多くのコラムニストが、クーパー氏の発言は不正確だと指摘している。

米ユダヤ人団体、名誉毀損（きそん）防止同盟（ＡＤＬ）のジョナサン・グリーンブラット最高経営責任者（ＣＥＯ）は上記のインタビューを「本当に不快」と酷評。ナチスの広範な強制収容所のネットワークはユダヤ人を絶滅させるヒトラーの意図的な計画の一部だったと説明した。