出血と苦痛、おびえながら流産処置の待機期間を過ごす女性 中絶制限法の米ジョージア州
待機期間と書類手続き
ベルさんは打ちひしがれた。妊娠18週では胎児が子宮の外で生きることはできないと分かっていたからだ。
ベルさんには出血を抑え、感染を防ぐために、子宮内容除去術と呼ばれる処置が必要だった。
しかし胎児にはまだ心拍があったため、処置は中絶になる。ジョージア州の法律では、妊娠6週を超える中絶は「妊婦の死亡や主要な身体機能の重大かつ不可逆的な損傷を防ぐために必要な場合」を除き、犯罪とされている。
ベルさんは医師が「ジョージア州にいるため、すぐに手術に移ることはできない」と言っていたと振り返る。
ジョージア州の24時間の待機期間はベルさんをおびえさせ、いら立たせた。
「私たちは宙ぶらりんの状態で待つしかなかった。胎児は死にかけていて、私はそのことを考えているその瞬間は安定していたが、10分後にはそうではなかったかもしれない。誰もこの中途半端な時間を延長すべきではない」(ベルさん)
法律はさらに、書類の記入を求めた。そこには、中絶の医学的リスクや出産できた場合の経済的支援の可能性などが詳しく書かれていた。
この中絶の同意書類には、科学的理由ではなく法律上の理由で書かれたようなくだらない言葉が並んでいたという。
その日の遅く、ベルさんの血液中のヘモグロビン濃度が危険水域に達するほど低下していることが検査で判明。命に対する危険がさらに高まっていることが分かった。この新たな兆候によってようやく医師はベルさんを助けることができた。
ベルさんは、最終的に必要な治療を受けることができたことに感謝していたが、最善の判断を下すことが許されなかったと感じられた医師たちに代わって怒りをあらわにしている。
「医師はこうした状況に対応できるよう大学卒業後10年以上にわたり教育を受けたにもかかわらず、法律が身動きをとらせなくした」とベルさん。医師たちが、医学的知識がなく、生物学の仕組みとは相いれない価値観に基づいた立場の年配男性が作り出したハードルを乗り越えなければならないと憤慨した。
科学的な知識があり、家族の助けもあったベルさんだが、ジョージア州で流産を経験する他の女性が心配だと語った/Courtesy Avery Davis Bell
「法律が追い打ちをかける」
状況を長引かせることで精神的な負担も伴う。ベルさんは身体的にも精神的にも回復するにはしばらく時間がかかると考えている。手術後にもう一度鉄分の注入を受けなければならず、今はようやく散歩を再開したところだという。
残ったのは、さまざまな感情だ。家族全員が喪失を悲しんでいる。ベルさんと夫は今ももうひとり子どもが欲しいと願っている。一方で、ジョージア州の法律がつらい経験を長引かせたことに怒りを覚えている。「この法律が私たちに追い打ちをかけている」
家族に囲まれ、科学系の教育を受けたベルさんは、自分の治療について主張しやすいと話す。入院中、医師たちはベルさんを死なせないと安心させてくれた。医師たちはベルさんを仲間のように扱い、明確に意思を伝え、助けようとしてくれた。しかし、誰もが同じ状況にあるわけではない。ベルさんはジョージア州で流産する他の人たちを心配している。
「私は医師たちに限りない感謝の気持ちを抱いている。待ち望んでいた子どものことを悲しく思う。そして、生物学的な現実に基づかない法律や政策のせいで、私や私の治療チームがより困難な状況に陥ったことに怒りを覚える。誰もこんな経験をするべきではない」(ベルさん)