放火殺人が見せつけたホームレスと犯罪と移民問題、「精神衛生施設」と化す地下鉄 米NY市
(CNN) 米ニューヨーク市の地下鉄車内で女性が火を付けられて死亡した事件は、発生から1週間たった今も被害者の女性の身元が判明していない。殺人容疑で逮捕されたグアテマラ出身の不法入国者の男は、現場にいたことさえ覚えていないと供述している。
今回の事件は、ホームレス問題や犯罪問題、破綻(はたん)した移民制度の問題が複雑に絡み合ったニューヨークの現実を、改めて見せつけた。
事件はブルックリン区を走る地下鉄の車内で22日に発生。容疑者と被害者は最後尾の車両に乗車していた。ホームレスの人々はそうした車両で夜の寒さをしのぐことが多い。調べによると、セバスティアン・サペタカリル容疑者は、駅に停車した地下鉄の車内で被害者に近寄ると、ライターで火を付けた。
容疑者はホームのベンチに座り、火に包まれた被害者と、火を消そうとする警察を見つめていたとされる。
サペタカリル容疑者はニューヨーク市内のホームレス向けシェルターを出入りしていたことが分かっており、直近で滞在していたのは薬物依存者の支援シェルターだった。
出廷したセバスティアン・サペタカリル容疑者=24日、米ニューヨーク市/Curtis Means/Pool via AP
ニューヨーク大陪審は27日、サペタカリル容疑者を殺人と放火の罪で起訴した。
州知事の発表によると、市の地下鉄の犯罪発生率は、今年3月に対策を打ち出して以来、10%減少した。しかしその後もホームレスなどが絡む殺傷事件は後を絶たず、市民や通勤客の不安は消えていない。
ブルックリン区のジャスティン・ブランナン市議によると、24時間運行している地下鉄は、ラッシュアワーの時間帯と、乗客が少ない時間帯で様相が一変する。「地下鉄は実質的に、精神衛生施設と化した」とブランナン市議は言い、「夜11時以降や朝の5時や6時といった時間帯の通勤客は、まったく違う現実を目の当たりにしている」と語った。