ニューヨーク市、米国初の「渋滞税」導入 2025年が存続の試金石に
渋滞税はマンハッタンの60丁目以南を走行する車両に課される。徴収は1日1回で、乗用車の場合、ピーク時が9ドル(約1400円)、オフピーク時が2.25ドル。年間世帯収入が5万ドル未満の場合、ピーク時間帯に50%の割引が適用される。
ピーク時間帯は、平日が午前5時から午後9時まで、週末が午前9時から午後9時まで。
世論とトランプ政権の壁を乗り越える
渋滞税をめぐる問題は、すでに裁判所でほぼ決着がついているため、トランプ氏が大統領として渋滞税を撤回しようとした場合、苦戦を強いられる可能性があるとジェラード氏は指摘。現時点で覆すことができるのは議会だけだと述べた。
共和党が僅差(きんさ)で過半数を占める議会は、理屈の上では、MTAへの連邦資金を差し止めると脅すことで介入できるかもしれない。
「考えられないことではないが、並大抵のことではない」(ジェラード氏)
未解決の訴訟は他にもある。ニューヨーク市教員連盟(UFT)とニューヨークトラック協会(TANY)は以前、通行料が徴収されるエリアに乗り入れる低所得の通勤者にとって渋滞税は悪影響を及ぼす可能性があるとして、MTAを相手取って訴訟を起こした。
だが、非営利団体コミュニティー・サービス・センターが行った22年の調査では、マンハッタン以外の行政区に住む貧困層の住民のうち、通勤時に渋滞税が徴収される人の割合はわずか2%程度で、約61%は通勤に公共交通機関を利用していることが分かった。
ニューヨーク大学ロースクールのロデリック・ヒルズ教授はCNNに対し、渋滞税が導入された現在、訴訟で覆される可能性は低いと述べている。
他都市への刺激となるか?
米国の他都市の当局者は、ニューヨークの動向を注視している。
交通データの分析を行うINRIXによると、シカゴはニューヨークと並んで、米国で最も交通渋滞がひどい都市だ。
シカゴ交通局(CTA)の広報担当者、マニー・ゴンザレス氏は声明で、CTAはニューヨークが渋滞税をどのように導入するかを注視しているとしたうえで、「これは地域の公共交通システムを直接改善するための多額の資金を生み出す可能性がある収益源の一つだ」と述べている。