ニューヨーク市、米国初の「渋滞税」導入 2025年が存続の試金石に
ニューヨーク(CNN) 米ニューヨーク市がマンハッタン中心部に乗り入れる車両から通行料を徴収する「渋滞税」を導入した。
今月に5日に導入された渋滞税では、通行料の徴収によって、市の財源確保のほか、交通渋滞の緩和や大気汚染改善の可能性が期待されている。だが、法的な異議申し立てやトランプ次期大統領による反対は、渋滞税が一時的なものに終わるのか、米国における新たなトレンドになるのかを決定づけるかもしれない。
ニューヨーク出身で、トランプタワーがマンハッタンの渋滞エリア内にあるトランプ氏は、渋滞税は「ニューヨーク市にとって大惨事」と批判。昨年5月にはソーシャルメディアに「就任後、最初の週に通行料の徴収を廃止する!!!」と投稿している。
米コロンビア大学ロースクールのマイケル・ジェラード教授はCNNに対し、1月20日の大統領就任式前に導入することが、渋滞税を存続させる鍵だと述べた。
トランプ氏の就任前に渋滞税が導入されなかった場合、連邦道路管理局(FHA)は承認を取り下げ、導入を阻止できたかもしれないとジェラード氏は説明。「だが導入されてしまった以上、方針を覆すのは非常に難しいだろう」
渋滞税を無期限で延期するとした昨年6月の決定を覆すよう求め、ニューヨーク州のホークル知事を訴えた法律専門家連合のメンバーだったジェラード氏は、ニューヨーク州都市交通局(MTA)に対する他の未解決の訴訟が大きな成功を収めるとは思わないと述べた。
ジェラード氏によると、渋滞税をめぐる訴訟は4人の連邦判事と2人の州判事の前に持ち込まれたものの、問題を発見したのは1人のみで、技術的な点についてもっと説明が必要だというものだった。
「判事らが異議申し立てに多くのメリットがあると考えていたなら、導入前に阻止することもできたはずだ」(ジェラード氏)
ニューヨーク市をめぐる対立したビジョン
渋滞税をめぐっては、コロンビア大学の経済学者ウィリアム・ビックリー氏が1950年代初頭に通行料徴収のコンセプトを提唱。2007年、当時ニューヨーク市長だったマイケル・ブルームバーグ氏は通行料の徴収を提案したが、最終的には却下されている。
賛成派は、渋滞税の導入によって交通量と公害が減少し、市のプロジェクトに収入をもたらすと主張する。一方で反対派は、ドライバーに不必要な負担をかけ、市からビジネスを遠ざけることになると述べている。
昨年12月の世論調査によれば、ニューヨーク市の有権者の半数以上が反対している。
都市政策団体リージョナル・プラン・アソシエーションのケイト・スレイビン氏はCNNに対し、交通量の減少や公共交通機関への投資など、人々は時間が経つにつれ渋滞税のメリットを感じられるだろうと語った。
ニューヨーク市の渋滞税は米国初のものだ。だが、通行への徴収は世界の都市で何十年も前から導入されており、シンガポールでは1970年代から、英ロンドンでは2003年から、スウェーデン・ストックホルムでは07年から実施されている。