レバノン女性団体、DV防止法の成立を求めデモ
ベイルート(CNN) 中東レバノンの女性たちが、家庭内暴力に対して政府が真剣取り組むよう求めてデモを展開している。同国では、家庭内暴力防止法案が閣議決定でまとまったものの、イスラム教保守派の強い抵抗を受けて議会での審議が滞ったままとなっている。
女性活動家の団体「ナサウィヤ」の設立者、ナディネ・ムワドさんらは1年半前から運動を展開してきた。「ベイルートの街を歩く女性たちは華やかな服装で自由に見えるかもしれないが、それはまやかしだ」と、ムワドさんは主張する。家庭内では夫による暴力が横行していて、妻が殺されるケースも、同団体が把握しているだけで年間15件前後あるという。
2010年に閣議決定された防止法案は、夫婦間の身体的、性的虐待を犯罪として扱い、警察内に専門の即応チームを設けたり、加害者に接近禁止命令を出すことを可能にしたりする内容。これに対してイスラム教スンニ、シーア両派の宗教裁判所が、家庭内の問題にはイスラム法(シャリア)に基づく判断を下すべきだとして強く反発している。
家庭内暴力を受けた女性はこれまで、宗教裁判所や警察から、家庭の維持や名誉を優先して和解するよう言い渡されてきた。スンニ派裁判所のある判事はCNNに、「夫婦間の性暴力を犯罪化してしまうと、夫として最低限の権利を行使した男性が処罰されることになりかねない」と話した。
イスラム教保守派の反対意見を受けて、法案には多数の修正が加えられてきた。ムワドさんは「すでに実効性を失った法案が可決されても、悲惨な結果を招くだけだろう」と懸念を示している。