北朝鮮の人々の暮らし、ドイツ人写真家が撮影
そこには、外国人旅行者に必ず付き添うことになっている「ガイド」の一団が待ち構えていた。北朝鮮での振る舞い方や制限事項などについて、簡単な説明があった。写真撮影や住民との会話、歩き回れる場所などが厳しく制限されている。ガイドは、外国人と北朝鮮住民との間に立つ「人間の盾」の役も果たす。私がどこへ行っても必ずついてきた。
住民の日常をカメラに収めるのは、ことのほか難しかった。平壌の街の歩行者、上半身裸になってバレーボールを楽しむ男たち、道路にほうきをかける女性の集団、トラックの荷台に乗って仕事に向かう労働者――。それが精一杯の距離だった。住民と直接触れ合うことは、事実上不可能だ。住民側の不安や遠慮、威圧的なガイドの目に加え、ほとんどの相手に英語が通じないという事情もある。
ただ、ガイドのキム氏はよくしゃべった。人民軍で少佐まで務め、忠誠の褒美として東欧を旅行したこともあるという。
平壌から東へ約200キロ離れた海辺の街、元山も訪ねた。ここで見かけた現地の人々は、皆のんびりと夏の休日を楽しんでいるようだった。泳いだり日光浴をしたり、ボールで遊んだりする姿は、ほかのアジア諸国で見かける光景と変わらない。
帆に北朝鮮の旗の入ったヨットに乗ってみるのもいい。ビーチの周りはフェンスで囲われて、その中は外国人も自由に歩き回ることができた。郊外の貧しい農村とは対照的な風景だった。