夢さえ持てずに――北朝鮮における同性愛者の暮らしとは
韓国との軍事境界線には地雷が仕掛けられ、無事に越えられた例は過去にほんの一握りしかない。
しかしチャンさんには兵役期間の10年間、境界線沿いに配置され、韓国軍の通信を解読する任務に就いていた経験があった。
北朝鮮にはチャンさんと同じような悩みを持つ人がたくさんいるという。軍の上級将校は結婚後に同じ問題で苦しんでいた。故郷の町には結婚せず、独身を貫いた男性がいた。「北朝鮮ではみんな異常者扱いされる」と、チャンさんは嘆く。
1998年、韓国へ入ってまもない頃に、病院で手に取った雑誌に同性愛についての記事があった。それを読んで突然明かりのスイッチが入ったように、自分がだれなのかが分かったという。「本当にうれしかった」「私は37歳になっていた。女性と暮らすことはできないから、一生一人で生きていくのだと思い込んでいた」と、チャンさんは振り返る。