麻薬組織幹部を拘束も釈放、交戦激化し市民保護で メキシコ
メキシコ市(CNN) メキシコの治安省は19日までに、同国シナロア州クリアカンで麻薬組織「シナロア・カルテル」の幹部の捕捉(ほそく)作戦に踏み切り一時拘束したものの、市民の安否が気遣われる激しい銃撃戦に発展したためその後釈放したと発表した。
作戦中止を受け、カルテル側は銃撃戦で拘束した軍兵士や治安執行機関要員の計9人を解放したという。同国のアルフォンソ・ドゥラソ治安相などによると、終日続いたとされる治安部隊と同カルテルの間の銃撃戦で、住民らは家内などに身を隠す苦難を強いられた。
17日の銃撃戦に伴い、カルテル構成員5人と市民1人を含む7人が死亡。ロペスオブラドール同国大統領は記者会見で「犯罪者の捕獲は多数の住民の命以上の価値はない」と述べた。記者団に迫られ、幹部を釈放したことを否定しなかった。
銃で武装した男らが通りを歩く=シナロア州クリアカン/STR/AFP/AFP via Getty Images
この幹部は同国で「麻薬王」と呼ばれ米国で服役中のホアキン・グスマン受刑者の息子であるオビディオ・グスマン・ロペス容疑者(28)。米財務省によると、シナロア・カルテルを仕切る中心人物の1人となっている。
米司法省は今年2月、米国への麻薬密輸容疑で兄と共に訴追していた。今回の捕捉作戦は米国への身柄送還が狙いだった。
作戦は同幹部らが潜む民家の制圧を図るために開始。機関銃など治安部隊を上回る兵器で武装したカルテル構成員が駆け付けて激しい銃撃戦になったという。CNN系列局「ADN40」によると、カルテル側は装甲車両も動員し、激しい砲撃も浴びせた。
また、クリアカン市内の他の場所でも市全体に混乱を生じさせるような攻撃も発生したという。銃撃戦の発生で住民は家内にとどまるよう勧告された。また、学校も閉鎖された。