日本で発表の感染者数は「氷山の一角」、専門家が検査態勢の強化促す
これに対して厚労省は、検知できていない人がいることは認識しているとした上で、日本国内の症例は合計3000例前後だと思われると述べ、西浦氏の推計に反論した。
さらに、検査を希望する人が多いことも認識していると述べ、検査対象を症状が軽い人にも拡大する予定だと説明している。
英キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健司氏は、検査を受ける人が増えれば、新型コロナウイルスの感染率は高まると予想する。公衆の不安を和らげるためには、日本でもっと多くの人に検査を受けさせ、特にリスクが大きい高齢者を優先する必要があると渋谷氏は指摘した。
安倍晋三首相は緊急事態を宣言する可能性も検討すると表明した。しかし渋谷氏は、政府は流行拡大を想定した緊急時対応計画に照準を絞るべきだと述べ、重症者の治療とリスクが高い人の保護が重要だと話している。
医療ガバナンス研究所の上氏も同じ考えで、最も大切なのは、介護施設や病院、自宅などにいる高齢者の感染を防ぐことだと指摘、高齢者が新型コロナウイルスに感染して重病になった場合の死亡率は10%を超えると語った。
政府はウイルスの感染拡大を防ぐための対策を打ち出し、イベントが中止されたり企業が在宅勤務を奨励したりするなどの動きが広がっている。
しかし早い段階で入国制限に踏み切らなかったことに対し、安倍首相が国家の安全よりもオリンピックと二国間関係の方を重視したとの批判もある。上智大学の中野晃一教授は日本政府の対応について、中国から日本への人の流れを食い止めることに関し、他国に比べて寛大な姿勢を取ってきたと指摘する。こうした対応については、安倍首相を支持する立場からも、反対する立場からも批判が出ているという。
国民の多くは不安を募らせてトイレットペーパーなどの買いだめに走り、マスクや手指消毒剤は品薄状態が続く。最大の不安はウイルスそのものではなくこのパニックにあると、渋谷氏は警鐘を鳴らしている。