現在何が起きているかを正確に把握するためには、日々の事例を更新し、患者の年齢や性別に関する情報を織り込んでいく作業が必要になる。
迂闊(うかつ)なことに米国は、効果的な検査プログラムが存在しない状態に陥っている。これは途方もない失策であり、結果として新型コロナウイルスの感染拡大に拍車をかけてきた(今後もかけるだろう)。
しかし肝心なのは、検査態勢の不備と感染を生き延びることとは全く別の話なのだという認識だ。ウイルスに対する生存率を上げるのであれば、非常に異なる種類の投資や訓練、専門知識が必要になってくる。
最適なプログラムを実現するには、特殊なベッドを用意して床ずれを予防できるようにしなくてはならない。薬剤師には高齢者向けに特化した投薬の知識が求められ、看護師は体力の衰えた患者の介護に慣れている必要がある。
やみくもに検査の回数や対象を増やし続けるだけでは、すでに感染した米国民数千人の命は救えない。
感染者の増加を見越し、今以上に準備態勢を整えることで、それは可能になるだろう。そして韓国とイタリアが置かれた状況の際立った違いを考慮するなら、今こそ専門家集団からなる委員会を立ち上げるべきだ。老人病専門医や社会科学者、ICUの専門家などを招集し、最良の方策をまとめて高齢者のリスクに対処する。それが新型コロナウイルスの感染から高齢者を守り、必要な治療を施すことにつながるのである。
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医学博士のケント・セプコヴィッツ氏による寄稿です。同氏はニューヨーク市にあるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンター(MSKCC)に籍を置く感染対策の専門家です。記事における意見や見解は全てセプコヴィッツ氏個人のものです。