ロシアの戦車に書かれた「Z」の文字、戦争支持のシンボルとなった経緯は
(CNN) 2月下旬、ロシア軍がウクライナへの全面侵攻を開始する数日前、ソーシャルメディア上には「Z」の文字で飾った戦車、通信車両、ロケットランチャーなどが国境に向けて進む画像や動画が出回った。
キリル文字ではなくアルファベットの「Z」を用いたこのマークが何を示すのか。デジタル情報の分析家の間では様々な臆測が飛び交った。
軍事の専門家はこれを、ロシア語で「勝利のために」を意味する「Za pobedy」または「西」を意味する「Zapad」の頭文字だと解釈した。このほか「ゾロ分隊」を意味するものと推測したり、ウクライナのゼレンスキー大統領の頭文字ではないかと考える人もいた。同大統領はビデオメッセージで、自身がロシア軍の「第1の標的」だと語っていた。
ロシアが8年前にウクライナ東部で戦争をあおり立てて以降、同国の軍事行動を監視している英調査報道機関ベリングキャットは、「Z」の文字が何を意味するのかは不明であり、過去に使用されたのを確認したこともないと明らかにした。同機関の調査員、アリック・トーラー氏が先月20日にツイッターへの投稿で述べた。
ロシアの国防政策の専門家、ロブ・リー氏は、ロシア軍がウクライナ国境に兵力を集結させ始めたころから「Z」マーク入りの車両を追跡してきた。同氏によれば、このマークはウクライナでの戦闘に派遣された部隊を表すものである可能性がある。先月19日にはツイッターで「他とは異なる特別部隊もしくは小部隊を識別するためのものではないか」と指摘した。同氏はロンドン大学キングス・カレッジで戦争研究を専攻し、博士課程の取得を目指している。
しかしロシア政府がウクライナに対する激しい攻撃を命じてから数日後、謎の軍事記号だった「Z」はロシア国内で今回の戦争への支持を表明するシンボルになった。専門家からは新たな国家主義的運動の展開を示すものとの分析も出ている。