難民に対する「選択的思いやり」、ウクライナ戦争が見せつけた欧州の現実
フランスでは大統領選に出馬を表明した極右のエリック・ゼムール氏が今月8日、BFM TVに対し、欧州からの難民に対するルールと、アラブのイスラム諸国からの難民に対するルールの違いは容認できると述べ、「アラブやイスラムの移民は私たちから遠すぎて、文化変容や同化が難しいことは誰でも知っている」と語った。
ブルガリアのボイコ・ボリソフ首相はロシア軍のウクライナ侵攻が始まった数日後、欧州の国はウクライナからの移民に不安を感じないと述べ、「これは今までの難民とは違う。今まではどうしたらいいのか分からなかった。不確かな過去を持っていて、テロリストなのか(どうかも)分からない」と発言していた。
難民に対するこの待遇の差は、ウクライナが受け入れ国に近いこと、さらにはロシアがこの戦争を通じて欧州の安全保障を脅かしているという西側の認識に起因するのかもしれないとヘリヤー氏は解説する。
「それでももっと生々しい、民族的な反応を過小評価することはできない」と同氏は述べ、欧州がウクライナ難民に目を向けているのは単純に、ウクライナ人が白人で、キリスト教を受け継いでいるという理由もあると言い添えた。
人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのジュディス・サンダーランド氏は「同情心や連帯感は、見た目や宗教が自分たちと同じ人たちだけでなく、助けを必要とする人全員に行き渡らなければならない」と訴える。
国連の21年の報告書によると、シリアからの避難を余儀なくされた約700万人のうち、約100万人が欧州に住み、このうち70%はドイツとスウェーデンが受け入れている。
UNHCRは、300万人のウクライナ難民が欧州各国で無条件に受け入れられていると指摘、「世界中で避難を強いられたほかの8400万人にも、同じ連帯、同情、支援が広がることを望む」と訴えた。